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［翔にぃside］
その日の夜、今朝の智にぃの
姿を思い出してやっぱり心配になったから、
みんなが就寝してから部屋にお邪魔してみることに。
ノックしても返事はなかったから、そっと入って
みたけど、廊下の明かりで部屋が照らされたら、
ベッドに寝転んで目をパッチリ開けてこっちを
見ている智にぃと目が合った。
「…寝られない？」
智「…」
「…ん？どうしたの？」
ベッドサイドの電気を付けて問い掛けてみたけど
特に返答はなし。
なんだかボーッとしているような…
なにか考えているような…
そんな複雑な表情をしたまま、こっちを見つめてくる
けど、微動だにしない。
「…智にぃ？」
智「…」
膝をついてベッドサイドに座り込んで顔を覗き込めば
次第に目が潤み出した…
『やっぱりなんかあったんだ…、覗いてみて
よかった…』
そんな安堵する気持ちと…
『俺で受けとめられるのかな…』
そんな不安な気持ちも…
「…なんか、あった…？」
智「…」
長い長い沈黙…
智にぃと目を合わせたまま、髪の毛を触りながら
時折「…ん？」ってタイミングを伺って。
そしたら「…わかんない、よ」って、やっと智にぃの
言葉が聞けた。
「…ん？なにが、分からなくなった？」
智「…」
またまた長い沈黙…
でもね、いくらでも待つから…
そんな気持ちでただただ傍にいてゆったりと、
智にぃの気持ちに寄り添う。
いつも智にぃがしてくれるように…
そしたら「寂しくなった…の、かもしれな、い…」
って、ポツリと言葉を繋ぎながら、ポロポロと
泣き出した智にぃ。
その言葉を聞くまで、仕事のことか、プライベート
か…とも考えていたけれど、今朝の智にぃの表情が
パッと浮かんで納得できる自分がいる。
すぐには返す言葉が見つからなくて…
「…そっか」
智「…っ、…ん…」
頬を零れる涙を指でそっと拭う。
甘えられるはずの存在を早くに失った心の傷が
智にぃの中にはずっとあって…
俺ら弟は、兄達に甘えればいいけれど長男の智にぃはそうはいかない。
夢を見たことで、頼ったり甘えたりしたかった存在を
失った不安や寂しさを思い出してしまって、それを
一人で抱え込んでいたんだろう。
俺がどうにか出来ることではないのかもしれない
けど…
こうやって弟の俺の前で涙を零すってことは
それほどに智にぃの心はすでにいっぱいいっぱいなの
かなって。
少しだけど心が退行しているようにも思えるし。
「…大丈夫だからね」
智「…ん」
力になりたい。
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作者名：空
| 作成日時：2019年3月25日 20時
