3111.【智にぃの肺気胸】 ページ11
［智にぃside］
なんだろう…
胸が痛い。
はじめは、まぁ気のせいだろう…で済ませていたん
だけど、そんなレベルではなくなってきている気が
して不安になる。
昨日の夜、さすがに翔に気付かれて「どっか調子
悪いの？」って聞かれたけど「大丈夫」って返した。
翔は鋭いけど、胸が痛いってところまでは分からな
かったみたいでセーフ。
この期に及んで逃げ切れたって安心してる俺は最低
だな…と自分で思う。
でも、体調が酷くなってくると、どんどん言い出し
にくくなるもので…
「…っ、いってぇな…」
日中、一人で家にいると何度も呟いてしまう。
翔にLINEしようとスマホを手にとっては、やっぱり
やめてしまう…の繰り返し。
あと一日したら治るかもしれないって期待が…ね。
自分に都合よく言い訳してるだけなんだけど、入院
とか治療とか、やっぱり嫌なもんは嫌。
考えれば考える程に、隠すことばかりに気持ちが
いってしまって…
翔「…ちょっと、智にぃ？どうしたの？」
「…ごめ、ん、痛い…」
ついに限界がきて、昼間に一人でソファーで悶えて
いるところに、当直明けの翔が帰ってきてバレるって
いう、俺的には最悪のパターン。
翔「いつから？」
「…今朝」
翔「嘘つき」
咄嗟に出た嘘もピシッと振り払われて終わり。
ギロッと睨まれて、胸に聴診器が当てられて…
翔「どんだけ我慢してたの…信じられない」
「…っ、ごめ、ん…」
症状は良くないみたいで、翔の怒りはマックス。
俺にできることといえば、目を瞑って翔からの
視線から逃れることくらいで。
翔「病院いくよ？」
「やだ…」
翔「智にぃ！こっち見て？」
「やぁだ…」
腕を引かれるけど、目を開けずに抵抗。
終いには「いい加減にして！」って叱られ、グイッと
腕を引かれて起き上がらされた。
翔「状況分かってる？…立って！」
「やだ…」
翔「どうしても動かないっていうなら、救急車
呼ぶことになるけどいい？」
「…」
翔「もういい、救急車呼ぶから」
「…っ！だめ…」
翔の服を掴んだら「じゃあ、いくよ」って、腕を
掴まれた。
もう観念するしかないよね…
痛む胸を庇いながら、体を支えてもらう。
やっぱり、こんなになるまで我慢するんじゃ
なかった。
いつも、こうやって後悔することになるんだよね…
分かっているんだけど、入院からも治療からも
逃れたくて、ついつい…ね。
翔には車の中で「病院で無駄な抵抗するのは
やめてね」って事前に釘をさされた。笑
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作者名：空
| 作成日時：2019年3月25日 20時
