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［先輩side］
「行かないって？」
翔「…はい」
医局に戻ってきた翔くんは項垂れてる。
和くん、今回の入院では院内学級に行きたがらなくて
まだ一度も行っていない。
理由が「…意味ないから」だった。
相変わらず覇気のない虚ろな目で「もういい」を
繰り返すばかりで…
俺は他の兄弟のメンタルも気にしている。
この状況は堪えるだろうと思うと…
翔「ちょっと行ってきますね」
「勉強か？」
翔「はい。少しでも追いつかせてやりたいんで」
でも、俺のそんな心配は今回良い意味で裏切られた。
翔くんが落ち込んだり、項垂れるのはほんの一瞬。
すぐに気持ちを切り替えて、こうして行動を
起こしてる。
それは他の兄弟達も同様で…
潤「ねぇ、やろうよ〜？和がやってくんないと
つまんなーい！」
和「…」
虚ろな目をした和くんに、潤くんは一生懸命に
話し掛けてる。
「和がいないと俺やだ！」「和とやりたい！」
そんな言葉を投げ掛けながら…
そうだね、伝わるね。
潤くんにとって、和くんの存在がいかに大切か…
雅「ただーいまー！」
翔「病院にただいまはないだろ？笑」
雅「あひゃひゃ！そうだった！笑」
こうした雅紀くんの明るさと笑顔。
雅紀くんは仕事を早めに切り上げて、こうして病院に
直帰している。
雅「みてみて、ハンバーグ丼見つけた！美味しそう
じゃない？みんなで食べよ〜」
潤「あ！美味しそう！」
雅「でしょ、でしょ〜」
この兄弟達に、病院食を無理矢理に食べさせると
いう選択肢はない。
もちろん、今回はそれが可能だったからだけど。
『いただきまーす！』
4人の声が揃って元気に響いて、その後に和くんの
口が小さく「…いただきます」って動く。
その頭を雅紀くんが「えらいね、和。頂こうね」
って言いながら優しく撫でる。
雅紀くんは日々、動物と関わる仕事をしているから
命を頂くということを、とても大事にしている。
前に翔くんから、そんな話を聞いたことがあった
んだ…
和くんが「いただきます」って言葉を発しなかった
時期も雅紀くんは「いいよ、和。その代わり心では
しっかり伝えようね…」って、優しく胸元を
さすってあげていた。
だから、こうして言葉を発してくれるようになって
嬉しいと思う。
智「どう？美味しい？」
和「…ん」
智「よかったね」
スプーンで少しずつハンバーグ丼を口に運んで
あげるのは智くん。
和くんは無表情だけど、モグモグと口を動かしてる。
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作者名：空
| 作成日時：2017年11月17日 22時
