5人で生きてゆく…part56 (ページ30)

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［和side］

エレベーターに乗っていたら
急にガタンッて大きな音がして…

ビックリして、買ってもらったゲームの入った
袋を落としてしまった。

雅「やだ…止まっちゃった…どうしよう…」

「大丈夫だよ、非常ボタン押すから。ね？」

雅にぃの焦ったような不安そうな声を聞いて
「そうだ…エレベーターでトラウマあるんだ」って
思い出して。

「一人じゃないから平気でしょ？」って声を
掛けながら手を握ったら、ビックリするくらい
冷たくなってる…

極度の不安からなんだろうな…って。

「大丈夫だよ、雅にぃ…」

雅「…すぐ、動くよ、ね…？」

「ん、大丈夫」

手を握りながら非常ボタンを押し続ける。

しばらくしたら「どうしました？」って応答する
声が聞こえたんだけど…

「…っ、んっ…」

雅「かず？」

急に胸がギュッと苦しくなった。

なんでこのタイミングで発作なの…

異変に気付いた雅にぃが声を掛けてくれるけど
答えられない。

雅「ねぇ、和…しっかりしてよ…やだよ、やだよ、一人やだよ…」

「…ん、…っ…」

いつもだったら雅にぃが俺のこと支えてくれるのに
パニック気味の雅にぃは泣いてしまって…

「大丈夫だよ」って伝えてあげたいのに、胸が
苦しくってそれができない。

［雅にぃside］

エレベーターに閉じ込められたってことだけで
俺の恐怖心はピークだったのに…

和「…っ、んっ…ん…」

「かず…しっかりして…」

倒れそうになった体を床にそっと寝かせたら、
少しだけ目を開けて「あ…」って小さく声を
漏らした。

視線の先にあったのは袋に入ったゲーム。

「やろうね、和。これやろうね…」

和「…ん」

急いで拾って和の手に袋の紐をかけてやったら
微かに頷いて、ギュッと握った。

「かず…お願い。あと少しだけ頑張って…」

和「…っ…」

エレベーターのことと、和の発作とで、俺は恐く
って涙が止まらないけど、この状況何とかしないと
どうにもならないし…

「…っ、ん…薬は？…どこにあるの？」

和「…ん、ん…」

和の首元を探ってみるけどエスティペンダントは
見つからない。

問い掛けたら首が少しだけ左右に振られた。

ないってこと…？

薬がないと、発作で苦しむ和に何もしてやれない…

和「…っ、苦し…」

「苦しいね…かず…」

パニックで自分を見失いそうになるけど、目の前の
和を助けなきゃと思って…

緊急ボタンを押して「閉じ込められてます」
「急病人がいます」「早く助けて」って何度も
叫んだ。