2604.【4】 ページ4
［智にぃside］
翔「ん、んん…」
目覚めた翔は、薬のお陰で少し体調も
良さそうで、精神的にも落ち着いていた。
先「翔くん？…少し話さない？」
翔「ん、ん…」
先生がベッドサイドに座ってくれて、論文のことを
含め、話をしてくれる。
今回の論文が全てではないこと。
自分も、一生懸命にまとめた論文を否定されて
辛い思いをしたことがあること。
翔は時折、頷きながら聞いてはいるものの
受け入れることは出来ないみたいで。
自分の気持ちを聞かれると、俯いて「分かり…
ません」と呟くばかり。
先生がこうして励ましてくれた後も、やっぱり
出勤は出来ず、自己否定は続いている…
「これ飲んで寝よう？」
翔「…ん。夢…見ないか、な？」
「昨日はどうだった？」
翔「大丈夫…だった」
薬を処方してもらったから、睡眠はとれてる。
だけど夢を見るのが恐いみたいで、飲むまで
少し嫌がるんだよね…
「眠くなるまでここにいるから…ね？」
翔「…ん、分かった…」
薬を飲ませてベッドに寝かせる。
目を閉じるまで傍にいるからね。
［先輩side］
翔くんがカウンセリングを拒否しているから
俺が何度か家を訪問した。
翔「…分かり、ません…」
気持ちを聞こうとすると、俯いてしまって
自分の気持ちを話そうとはしない。
いつも相手の目を見て、しっかりと自分の意見を
ぶつける翔くんの姿とかけ離れていて…
正直、戸惑う。
トントントン…
話をしていたらノックされたドア。
「せんせい…」って顔を出したのは和くんで。
和「俺、知ってるんだ…翔にぃが苦しんでる
理由…」
翔「かず…」
和「俺のために、いっぱい頑張ってくれたのに
駄目だったんでしょ？」
翔「…」
和「でもね、駄目でも俺、すごい嬉しかった。
まだまだこの先、研究が進んでいくんじゃ
ないかって希望がもてたから」
翔「…」
和「それに、翔にぃが俺の病気のこと、諦めて
ないってことも嬉しいの…」
翔「…」
和「だからね、翔にぃ…ありがと…」
和くんは、俯いたままの翔くんにピトッと
抱きついた。
翔「…ありがとう」
小さく呟いた声が聞こえて…
その時は、表情が少し柔らかくなったな…
って感じる程度だったんだけど。
和くんの言葉がきっかけになったんだと思う。
翔「俺…また諦めないで頑張ろうと思います」
「ん、そう思えたならよかった…」
次に家を訪ねた時には、そう答えてくれた
翔くん。
その目はしっかりと俺を見ていた。
もう、大丈夫だな。
END
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作者名：空
| 作成日時：2017年7月13日 21時
