2620.【翔にぃのパニック】 ページ20
［智にぃside］
深夜、部屋で仕事を
していたらガチャッと突然開いたドア。
翔「…っ、智、にぃ…」
「…っ、どうした？」
入ってきた翔を見てビックリした…
「どうしたの、その汗…」
翔「…っ、んくっ…」
「なんで、泣いてるの…」
汗びっしょり…
それに頬を涙が流れてる…
「こっちおいで…」
手招きしたらトコトコと寄ってきて「夢が…」
って。
悪夢で飛び起きたってことかな…
それなら汗も、頬の涙も説明がつく。
ベッドに座らせて肩を抱きながら、タオルで
顔を拭いてやる。
風呂上がりに俺が使ったタオルが、たまたま
近くにあったから。笑
「夢見た？」
翔「…っ、んっ、んくっ…」
頷きながらも、しゃっくり上げて泣き方が
激しくなってしまう…
思い出してしまったかな。
「翔？夢だから大丈夫。現実じゃないでしょ？」
翔「…っ、んくっ、んっ…、ん…」
「ね…大丈夫…」
翔「…んっ、…っ、んくっ…」
「こっち見て…？」
何を言っても泣きながら首を振るばかりだから
肩を両手で軽く掴んで、目を合わさせる。
翔「…っ、ん、さと、にぃ…」
「ん、大丈夫。恐かったのは夢だから…ね？」
翔「…っん、んっ…」
「よしよし…」
［翔にぃside］
智にぃは抱き付いていった俺を受けとめて
背中をさすってくれる。
和が死んでしまう夢を見たんだ…
『和が死んだ』なんて、例え夢の話であっても
口には出したくない。
思い出すだけで涙が止まらなくて…
とても言葉には出来なくて「…和が」って
伝えるだけで精一杯。
だけど智にぃは分かってくれた。
「夢だから大丈夫」って耳元で何度も声を
掛けてくれて、俺が落ち着くまで根気強く背中を
さすってくれて…
「…っ、さと、にぃ…俺、恐い、よ…」
智「ん、恐いね。一緒に居るから大丈夫だよ」
考えたくもないことを夢の中で突き付けられて…
もしも…って考えずにはいられない自分がいる。
それを認めるのが恐い。
また夢を見るかもしれないのが恐い。
智「今日は一緒に寝よう」
「…ん」
智にぃのベッドに寝かせてもらって
胸元をさすってもらったら、だいぶ落ち着いた…
だけど翌日も『もしも』の思いは消えなくて
気持ちが参ってしまう。
可能性がゼロではないことが恐くて…
和を失うことを考えると恐くて…
どうしても不安定になってしまう心。
一人では抱えきれなくて智にぃに頼ってしまう。
一人になるのが恐くて、縋っちゃう…
不安な思いは消えてくれない。
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作者名：空
| 作成日時：2017年7月13日 21時
