2359.【末っ子の自傷行為】 ページ9
［翔にぃside］
「頼んでいい？」
智「もちろん」
「たぶん起きないと思うけど、もし変化があったら
教えてね」
智「ん、了解」
軽い睡眠薬と抗不安薬を服用して、和室で
眠りについた和。
ここ数日、薬を飲まないと寝られない日が
続いてる。
昼間は元気に活動できているから、俺も普通に
仕事に行かせてもらってる。
だから睡眠はしっかりとらなきゃだから、夜の
付き添いは智にぃに任せてるんだ。
ドンドンドン…
みんなが寝静まった真夜中。
何かを壁に打ち付けるような音が響いて
目が覚めた。
和に何かあったかな…と想定しつつ、そっと
部屋を出たけれど…
「…じゅん？」
ドンドンドン…
音は潤の部屋から聞こえているんだと、部屋を
出てすぐに分かった。
コンコンコン…
「入るよ？」
潤「…」
返答はないけれど、ドアをそっと開ける。
「お前…何やってんだ…？」
思わず駆け寄ってしまう。
ベッドサイドの間接照明が付けられていて…
ドンドンドン…
フローリングに座った潤は、ベッドに寄りかかる
様にしながら、頭部の左側をベッドに
何度も打ちつけていた。
「…じゅん？」
あまりにビックリして、慌てて駆け寄って
しまったけれど、肩に手を掛けようとして
カウンセラーの言葉を思い出した。
焦らずに…
刺激せずに…
「じゅん…？」
落ち着いたトーンで名前を呼びながら、傍に
そっと座る。
一定のリズムで頭を打ち続ける潤の目からは
涙がポロポロと零れていて…
「じゅん…？」
そっと手を伸ばして膝の辺りに触れる。
もう長い時間、こうして一人で自傷行為を
していたのかもしれない。
すっかり冷え切ったスウェットが、それを
教えてくれている気がする…
「…じゅーん？」
膝に当てた手を今度は頭へと移動させてみる。
刺激しない程度に、優しくを意識しながら。
「じゅん…？」
ゆっくりと視線を落として、潤と目を合わせて
みる。
涙がたくさん溜まった、大きな目が二つ…
潤「…っ、…」
ゆっくりと、でもしっかりと俺を捉えたのが
分かった。
「…おいで。どした…？」
正面に移動して、腕の中にしっかりと抱き締める。
潤「…っ、んくっ…、…んっ、…んっ…」
しゃっくり上げるばかりで、まだ言葉は
ないけれど。
苦しい程に伝わってくる潤の思い…
何があったのだろう。
苦しいね…
辛いね…
「ここにいるから。…な？寝れるなら
このまま寝ちゃいな…？」
思いはいつだって受けとめるつもりでいるから…
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作者名：空
| 作成日時：2016年10月26日 18時
