2351.【長男の扁桃腺炎】 ページ1
［智にぃside］
深夜1時過ぎ…
ガチャ…と玄関のドアが静かに音を立てて
翔が帰ってきた。
「おかえり、おつかれさま」
翔「…起きててくれたんだ」
「ふふ。たまたま。仕事やりたかったから」
翔「そっか、ありがとう」
帰ろうとしてたタイミングで、入院してる
患者さんが急変して、緊急手術だったんだって。
翔は担当患者は受け持っていないけど、何か
あればもちろん手伝う。
だから今日は「遅くなるよ〜」って連絡が
きたんだ。
こんなに遅くに帰ってきた日も、翌朝は8時過ぎには
出勤していく。
朝は和の診察もあるし、新聞にも目を通して
いくから割と早起きだし。
いつも「偉いなぁ〜」って思ってる。
雅紀だって、残業続きの日があったりしても
愚痴も言わずに頑張っているし。
なのに俺はさ、シフト制の仕事ではないから
自由にさせてもらっていて。
収入だって安定はしていないしね。
だから大きな仕事をもらえた時は、それなりに
張り切るわけ。
いくら大きな仕事でも『やりたい』って
気持ちがなければ断ってしまうけどね。笑
今回は『やりたい』って思ったから。
期日も迫ってる仕事だったけど、二つ返事で
引き受けた。
翔や雅紀だって頑張れているんだから、
俺だって頑張れる。
もしかしたら、どこかで意地になって
いたのかもしれないね…
［翔にぃside］
雅「熱、高そうだけど…」
「やっぱり…。ちょっと診てくるわ」
ここのとこ1週間くらい、仕事が立て込んでて
忙しそうにしていた智にぃ。
昼間に寝てるならいいけど、そんな感じも
しなかった。
家事、しっかりこなしてあったから…
家でとはいえ、働きすぎ、寝なさすぎ。
トントントン…
「ちょっと休憩したら？何か飲む？」
智「…ん？だいじょーぶ…」
そんなにトロン…とした目で振り返られても
全く説得力ないし。笑
「熱、あるんじゃないの？」
智「んふふ…ちょっとね」
首筋に当てた手はやんわりと拒否され。
「期日とか迫ってるの？」
智「ん、少し。イマイチ納得いく感じに
仕上がらなくて…」
「そっか…」
机の上に広げられたのは、何枚かプリントアウト
されたデザイン。
さらにはパソコンの画面にもいくつか。
編集に編集を重ねて、納得いくものを
作り上げていくんだろうな…って。
毎回思うけど、智にぃの仕事ってすごいと思う。
俺には到底できっこない。
口には出さないけどさ。
「熱、計ってみてよ。心配だから…」
智「いや、いい…」
この人ね、頑固。笑
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作者名：空
| 作成日時：2016年10月26日 18時
