2109.【3】 ページ9
［智にぃside］
処置室に駆け付けたら
看護師さんが「どうぞ」って入れてくれて。
丁度、先生が点滴をしようとしているところで
翔が右腕を軽く固定してた。
俺を見つけて「あ、智にぃ…」って、ホッと
した様な表情を見せた翔。
『俺も同じ気持ち…』って思いを込めて
笑顔を返す。
翔「声、掛けてあげてくれる？」
「ん、ありがとね…」
和の顔の傍にしゃがみ込んで頭を撫でれば
「さとにぃ…」って、か細い声…
水分を多く含んだ目で見つめてきて、今にも涙が
零れそうだ。
「苦しかったね…よく頑張った」
点滴の邪魔にならない様に気を付けながら
ギュッと腕の中へ。
和「…っ、んくっ…」
「ごめんね、かず…」
縋ってきた体を抱き締める。
先「よかったね、和くん。智くんもきてくれて…」
和「…っん…」
ビクッと体が震えて…注射針が刺されたみたい。
和「…っん、…っ、んっ…」
「だいじょうぶ…恐いのおしまい」
翔「薬入れたら、ラクになるからな…」
翔が頭を撫でたら「…帰れる？」って。
すぐに帰るのは、ちょっと難しいかな…と
思いつつも「帰ったら何しようか」なんて話を
していたら眠ってくれた。
翔「スマホ、握ってたんだって…」
和の頭を撫でながらの翔の一言は重い…
ほんとに可哀想なことしちゃったと思う。
「…色々考えて、電話出来なかったかね」
翔「そうかもね…」
せっかく電話することを覚えていて、助けて
もらえる手段があったのにね…
「俺がそれ潰しちゃったら仕方ねーじゃんね…」
翔「ん、ほんと。お互い素直にならなきゃ
いけなかった…」
肩を落として落ち込む俺と翔を見て、先生は
「起きてしまったもんは、しょうがねぇだろ？」
って言いながら、豪快に笑う。
「はい…」
先「それに発作と喧嘩は関係ない」
翔「はい…」
先「2人揃って、叱られた…みたいな顔するな！笑」
智翔「…はい」
そうだよね…後悔したって仕方ないもんね。
翔「明日、帰ろうな…」
眠った和はエコー検査を受けて、いつもの病室に
運ばれる。
異常は見つかっていないけど、一泊の入院だ…
起きたらきっと「帰りたい」って言うだろう。
その気持ちを受け止めつつ、喧嘩のことを
謝らないとね。
どんな理由があっても、次こそは電話で
「苦しいよ」って教えて欲しいから…
翔「雅紀達、もうすぐ来るって」
「そっか。それまでに起きるといいけど…」
雅紀も潤も心配してるだろうから、元気な姿を
見せてやりたい。
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作者名：空
| 作成日時：2016年2月10日 18時
