2115.【5】 ページ15
［雅にぃside］
昨日の夜、
潤の部屋から出てきた翔にぃは
「明日、よろしく」ってイケめた顔して笑った。笑
智にぃと顔を見合わせて「説得、成功だね」って。
翔にぃは午前中の外来が抜けられないから
病院には智にぃと俺が付き添う。
潤の表情は朝から曇っていたけど「いやだ」とは
言わず「抜けられたら行くな？」って翔にぃの
言葉に頷いて小さく笑った。
カ「こんにちは〜」
智雅「こんにちは。よろしくお願いします」
潤「…」
カ「座る？」
潤「…いい」
カウンセラーに話し掛けられる度に、智にぃの
背中に隠れる範囲が広くなる。
やり取りしているうちに、すっぽりと智にぃの
後ろに入ってしまった。笑
でもね、カウンセラーはプロだから。
「話さなくてもいいからね」なんて言いながら
潤の話を聞き出してくれた。
単語で短く答えた事に潤の気持ちもプラスして
汲み取ってくれる。
潤の「和に心配掛けたくない」って思いも
もちろん分かってくれて。
副作用の少ない薬を処方してくれるって。
カ「じゃあ、最後にしよう？こっち向いて？」
潤「…」
途中からソファーに座った潤だけど、智にぃの
肩に凭れてカウンセラーの方を見ようとは
していなくて。
ソファーの下に屈んだカウンセラーが
力の入った潤の手を握る。
カ「一つだけ約束あるんだけど…」
潤「…」
智「じゅーん？」
カウンセラーの言葉を聞いた智にぃが
潤の頭を起こさせて、体を少し離す。
潤「…、ん〜…」
智「駄目。一つだけ聞いて？大事なこと」
凭れようとした体を押して、傍を離れた智にぃ。
俺も同じように距離をとる。
潤は諦めたのか顔を上げて、カウンセラーと
目を合わせて約束をしてくれた。
『一人で抱え込まずに、誰かに話すこと』
智「偉かったね、おいで」
潤「んっ」
智「いてっ…笑」
「あひゃ！怒ってる！笑」
強制的にカウンセラーと向き合わせたから
智にぃに八つ当たり。
「ごめん、遅れた」って駆け込んできた翔にぃに
ピタッとくっ付いた。
智にぃが「翔、タイミング良すぎ！ずるい！」って
膨れて。
それを聞いた潤が「くふっ…」って笑って。
『パニック障害』って診断名が付いたけど
こうやって過ごしていたら何も変わらない。
ただ…
症状は潤を苦しめる。
家に帰ってきてからは頭痛と眩暈が酷くて
ソファーに寝転んで唸ってる。
智「飲める？」
潤「…っ、ん、いい…」
近付けられたストローを拒否した潤の目から
涙が零れてきた…
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作者名：空
| 作成日時：2016年2月10日 18時
