2009.【9】 ページ9
［潤side］
検査の予定だった次の日。
和の熱は微熱程度まで下がって、笑顔も見せて
くれるようになった。
和「…ょ、にぃくる？」
先「…ん。昼過ぎになったらくるよ」
和「…ん。まってる」
先生の診察を大人しく受けて「ありがと…」って
病室から送り出した。
雅「よかったね、かず」
雅にぃに頭を撫でられて嬉しそうに笑う。
和は「翔にぃに謝りたい」って言ってた。
翔にぃが誰よりも苦しんでいるのを知りながら
責めてしまったから…って。
和「翔にぃと食べる…」
雅「翔にぃは智にぃとお昼ご飯食べて、それから
ここに来てくれるよ？和も俺らと食べよう？」
和「…ん」
さっき智にぃが先生に呼び出されて出ていった。
お昼ご飯を食べながら話をして、ここに連れてきて
くれるらしい。
雅「ほら、和が好きなハンバーグだ」
和「…ん、おいしそう」
雅「だろ？」
和は雅にぃが口に運んでくれるハンバーグを
パクッと食べる。
それから「潤も食べて？」って。
「ん、ありがとな」
俺も一口もらって、その代わりに俺の弁当の
とんかつを和に一口。
そうこうして、ワチャワチャと過ごしていたら
病室のドアがノックされた。
［雅にぃside］
智「ほら、翔…おいで？」
翔「…ん」
病室に入ってきたのは俯いた翔にぃ。
智にぃが背中に手をやって、ベッドサイドまで
誘導してくれた。
先生はそこまで見届けて静かに退室。
病室には5人揃っているのに、いつもより静かで
何だか不思議な空気が漂う。
和「…ょ、にぃ…」
その空気を破ったのは和。
翔にぃに手を伸ばしてベッドから身を乗り出して
ギュッと抱き付いた。
和「…ょ、にぃ。だいすき…」
翔「…っ、んっ…」
和「いっぱい、酷いこと言ってごめんね…」
翔「…っ、んくっ…」
翔にぃは和に抱きつかれたまま静かに涙を流す。
和「俺ね？翔にぃが担当医じゃなくなっても
我慢できる。だから傍にいて欲しい…」
これが、和が出した答え。
翔にぃが苦しむくらいなら、自分が我慢する。
黙って聞いていた智にぃが、そっと和の頭を撫でて
それから翔にぃの頭を撫でた。
それを合図とするように口を開いた翔にぃ。
『少しでも、和の力になりたい…』
『和の負担が減るなら、俺は頑張りたい…』
綺麗な涙を流しながらそう言って「ごめんな？」
って和を抱きしめ直す。
2人の気持ちは同じ。
大事だからこそ、優先して考える。
それって素敵なことだよね…
みんなで支え合って、前に進みたい。
END
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作者名：空
| 作成日時：2015年10月17日 13時
