2017.【2】 ページ17
［智にぃside］
こういう時、俺らは
ほんとに無力。
何もしてやれない。
出来ることといえば、和の頑張りを信じること
くらいかな…
薬の影響で、腕の中でウトウトとしていた和。
しばらくしたら「あらしに、会いたいから
潤に連絡して欲しい」って呟いた。
この言葉を聞いて、翔と頷き合う。
和が前向きに考え始めた証拠だから…
もちろん潤からはすぐに返信がきて『16時には
公園に連れていくから』ってさ。
「かず？潤ね、あらしのこと連れてきて
くれるって」
和「…っ、抱っこ、したい…」
翔「ん、いいよ」
和「…っ、ほん、と…？」
頼んだ張本人が、一番ビックリしてるんだもん
笑っちゃうよね。
翔が「いいよ」って言うとは思わなかったみたい。
翔「特別な？思いっきり抱っこしてあげな」
しばらく会えなくなるもんね。
あらしは間違いなく和のパワーの源になるから…
翔「その代わり、あらしに会ったら病室に
戻るからな？」
これだけは譲れない。
和「…っ、んっ…、やくそく、する…」
あらしに会ったら家が恋しくなるだろう…
離れる時に辛いだろう…
でも、抱っこして『頑張るね』って伝えられれば
このままよりは、ずっと前向きに頑張れるはず。
俺もそう思うから、翔の考えに賛成。
翔の言葉に頷きながらも、零れる和の涙を拭う。
力の入らない体を抱きしめながらね…
夕方には薬の効果も薄れて、元気になると思うから
そしたら思いっきり『あらしー！』って
叫ぶだろうね。笑
潤「かずー！！」
和「あっ、じゅーんー！あらしー！！」
予想通り。
俺と翔の間を歩いていた和は、公園に潤とあらしの
姿を見つけて思いっきり駆けていった。
翔「あの姿…しばらく見れねーな…」
「そうだね…」
元気に走る和の姿は、しばらく見れなくなる。
抗がん剤の副作用が強いらしいからね…
昨日、和以外の4人で話をしたんだ。
今回の病気のこと、そして…これからの治療の
こと。
抗がん剤の効きが悪ければ、早い段階で
『手術に踏み切るかも』ってことも含めて…
雅紀と潤はポロポロ泣いた。
潤は「和ばっかり…」って悔しがって…
でも、そんな姿を潤は、和の前では見せない。
飛びっきりの笑顔で「くははっ！」って。
それにつられて和も「きゃはっ！」って
可愛い声を上げてる。
和「あらし、おいで…」
思いっきり遊んだ後、和はあらしを抱いて
ベンチに座って、しばらく静かに抱きしめていた。
伝えたいこと、伝えられるまで待つからね…
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作者名：空
| 作成日時：2015年10月17日 13時
