2001.【翔にぃがよかった…】 ページ1
［和side］
あの検査が近付くにつれて
カウンセリングもハードになる。
前回は上手くいったけど、今回は無理かも…
シミュレーションで、検査室に居るのは翔先生って
分かっているのに、頭に浮かんでくるのは
俺に検査をしたあの先生。
恐くて恐くて腕を振り回して泣いて…
そこから先のことは何も覚えていない。
潤「あ、起きた…？もう家だから
大丈夫だからな？」
潤がそっと頭を撫でてくれる。
情けないよね…弟にこんな姿。
そう思うけどやっぱり、どうしてもあの検査が
恐い…
あの先生が恐い…
どうして俺がこんな思いしなくちゃいけないの？
痛くたって我慢できるのに、どうしてあの先生は
あんな恐ろしいこと言ったの…？
取り乱した俺は泣きながら、にぃ達のことを
責めていた。
にぃ達が責任を感じていることは知っているし
責めたい気持ちなんて、本当は少しもないのに
湧き上がる感情を抑えられなかった…
歯止めが効かなくなった俺は、怒りと不満の矛先を
翔にぃに向けた。
『どうして翔にぃが検査してくれなかったの？』
『先生なのに、どうして助けてくれなかったの？』
掴みかかって沢山責めた。
そのことは覚えていないけど…
『ごめん…ほんとうに、ごめん…』
翔にぃの苦しそうな言葉は耳に残ってる…
［翔にぃside］
平常心を失った和は、何度も何度も「どうして？」
って。
あの時のことについては話し合いを重ねてきた
けれど、こうして取り乱した和は歯止めが
効かない。
和の心がもたないから仕方がないことだって、
俺も頭では分かってはいるんだけど…
「…ごめん」
苦しくて、苦しくて…謝罪の言葉を口にして
逃げようとしてしまう。
智「…っ、翔！！」
もちろん智にぃがそれを許してくれるはずもなく…
智「やめて」
「…って、だって、おれ、が…」
智「翔！いい加減にしな。…立って！」
腕を掴まれて立たされた。
「部屋いくよ」って睨まれて。
智「ついて来て」
「…っ…」
でも俺は、自分の中にあるモヤモヤをなんとか
したくって…
気が付いたら和の前に膝をついて謝っていた。
和の瞳がユラユラ…揺れて。
俺に謝られたら和が混乱する。
分かってはいたけれど止められなかった…
智「お前っ…」
珍しく声を荒げた智にぃに思いっきり引っ張られて
部屋に連れていかれた。
でも…
もう、どうでもいい…
俺は和に謝りたい。
だって、俺が和に何もしてやれなかったのは
本当のことだから…
だから…
これでいい。
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作者名：空
| 作成日時：2015年10月17日 13時
