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［翔にぃside］
医「個室に
移りましょう」
医師は和や俺らが安心できる様にって
言ったけど、ほんとの理由はきっと違う。
泣き叫んで暴れたら、他の入院患者に
よくない影響を及ぼすからだ…
何だか追い払われたみたいで悲しくなった…
和「ぎゃー、
やだー、ぎゃー」
夕方、もう一度目を覚ました和は
さっきと同じように、何かに怯えて
泣き叫んで暴れた。
拘束された手足が動くたび、ベッドが
ギシギシと音を立てる。
精神科の先生であろう人が
和の様子を見に来てくれた。
精「ちょっと近付いてみて下さい」
精神科医の言葉を受けて
担当医が和に近付いていく。
和「やー、ぎゃー」
何とか逃れようと、必死になる和…
精「鎮静剤、打ってみてもらえますか？」
今度は、注射器を持って和に近付く。
和「ぎゃー」
それを見た和は、より一層泣き叫んで
注射されるより早く、意識を手放した…
精「検査の時の恐怖心ですね…
注射恐怖心…突端恐怖症」
精神科医の口から飛び出た単語に
馴染みがなくて…
「尖端恐怖症…ですか」
ひとり言の様に呟いた。
精「詳しくは、またお話します。
ただ、しばらくはこの状況から抜け出せないと
覚悟しておいて下さい」
頭を下げてから、病室を出ていく
医師と精神科医…
俺らの侵してしまった間違いの代償は
あまりに大きくて、和にとって
辛過ぎるものになってしまった。
和「ぎゃー、やだー、ぎゃー」
「すぐだから、ごめんな」
医「抑えてて下さい」
採血するにも大パニック…
拘束されてるのに、これでもかってくらい
泣いて暴れる和。
その小さな体を全力で抑え付ける俺ら…
看「過呼吸ですね。
紙袋あててあげて下さい」
あまりの恐怖に過呼吸まで起こしてしまう。
昨日まで「看護師さんね、採血が
すごく上手なの。痛くなかったよ？」って
笑っていた和。
その笑顔を見ることは、もうできないかも
しれなくて…
看「ゆーっくり呼吸しようね」
和「…や、さ、わ、な、いで」
和は看護師や医師のことも怖がって
避けるようになってしまった…
恐いことをした人達。という一つの
カテゴリーの中に入ってしまったらしい。
精神科医と何度か話をさせてもらった。
「恐怖症」を克服するには
本人の強い意思が必要だと言われ…
だけど、今の和は検査のことを
話すことすら出来ない…
そんな中で、さらに突きつけられたのは
まだ治療法が見つかっていない難病を
発症しているということだった…
もう絶望しかなかった…
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作者名：空
| 作成日時：2013年4月5日 8時
