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［翔にぃside］
先「前からあてるね。」
和「…」
声も出さず、頷きもしないものの
大人しくしてるってことは、聴診をしても
いいってこと。
泣かずにやってもらえるのは初めて。
先「はい、上手にできてるよ〜」
だけど、和はガチガチに緊張してて
体にすごい力が入っているのが分かる。
見てるだけで分かる呼吸の速さ…
先「かずくん、泣いていいよ。
あんまり我慢すると息が苦しくなっちゃう」
先生が声を掛けてくれたけど、
和は雅紀の胸に顔を押し付けて
耐えようとする。
見兼ねた先生が聴診器を離して
少し離れてくれたけど
和の呼吸は苦しそうなものに変わっていく…
カ「翔くん、過呼吸だ。この袋、使って？」
見ていたカウンセラーがくれた袋を
和の口元に当てる…
和は苦しさに耐えようと、雅紀の胸元の
Ｔシャツをすごい力で握っている。
智「かず、ちょっと頑張りすぎたね。
ごめんね。休もうね」
智にぃは背中をさすってくれる。
3人で囲んで、ひらすら温もりを伝え続けて
ようやく、和の呼吸が整ってきた…
先生は黙って背中を聴診して
頭を撫でてくれた。
和は反応する余裕もない…
雅紀にしがみ付く力もない…
力が抜けて人形みたいになって
ただ、雅紀の腕の中におさまってるだけだ。
だけど、目だけは開けて俺らを探してる…
先「喉と目、診てもいいかな？」
これも練習。
先生の手が和に触れることを、あえて毎回
繰り返して行っている。
智「雅紀、抱き直せる？」
雅「ちょっと厳しいかも…」
智「じゃあ、こっちちょうだい？」
智にぃはベッドに座って、和を受けとった。
虚ろな目で智にぃを捉えた和は
雅紀に抱かれていた時と同じように、
安心した表情になった。
智「かず、すぐだからね〜」
智にぃはいつもの様に、和を横向きにする。
何をされるか分かった和は、嫌がって
首を振るけど雅紀が頭を支えてくれる。
先「はい、すぐだからね〜」
先生の手を払おうとする手は
智にぃが抑えて、暴れる足は俺が抑え込む。
和「やーだー」
よかった…今度は泣けた…
さっきの経験から、泣かないのが必ずしも
良いことではないって学んだから…
先「嫌だね〜、ごめんね〜」
智「和、あーん？」
ペンライトと舌圧子を持った先生を見て
和の泣き声は一層大きくなるけど…
和「やー。やだー」
先「今日も上手だね〜。笑」
和より先生の方が毎回上手だ。
先生とカウンセラーが作り出す温かい空間を
和にも味わって欲しいと毎回思う…
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作者名：空
| 作成日時：2013年4月5日 8時
