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［翔にぃside］
病室に着いて早々、
昨日の夜中に和が泣いて
ナースコールを押してきたことを
聞かされた。
俺らの前では、あまり涙を見せない和。
叱られた時は泣くけどね…笑
心配になって病室を覗いたら
まだスースー寝息を立てていた。
だけど、その顔は安心しきって寝ている
可愛い寝顔ではなくて…
胸がギューっと掴まれたように
痛くなった。
こんな小さな体を、いったい何が
襲っているのだろう…
和「…しょ、にぃ？」
考え込んでいたら、
和に顔をじーっと見られていた。
「あ、かず。おはよう。ゆっくり眠れた？」
和「…うん」
俺の質問に目を逸らしながら答える和。
和「…のね、家に、かえりたい…」
ポロリと呟かれた和の本音にドキッとする…
当たり前だ。
まだ和は10歳…
いきなり検査だの入院だの言われて
きっと、心がついていけてない。
「うん、あとちょっと頑張って帰ろうな」
和「…うん」
ほんとは「やだ」って言いたいのだろう。
それを分かっているけど…
でも、そう言われてしまったら俺らも困る。
俺は遠回しに「頑張らなきゃ、家には
帰れないよ。」そう和に伝えていた。
なんて卑怯な兄だろう…
和が苦しそうにギュッと唇を噛んで
頷いた姿が頭に焼きついて離れない…
俺は医者なのに、せっかく医者になったのに…
目の前の患者の自分の弟ひとり
救うことができない。
早くしなくちゃ…
俺はこの状況から早く抜け出したくて
智にぃに和を任せた後、
パソコンに向かって、一日中ひたすら
病気のヒントを探し続けた…
智「ただいま」
夜遅く、ギリギリまで病院にいた智にぃが
疲れ切って帰ってきた。
智「潤、どう？」
「雅紀が寝かせてくれてるとこ。
病院行きたいって泣いてさ。大変…」
和が入院している小児科は
家族であっても未成年は病室に入れない。
だから、潤は和に会えていないんだ。
昨日も泣いてたけど、今日はもっと泣いて
「病院行く」って玄関を飛び出そうとして
雅紀が必死で宥めてた。
潤はこの時から、何かを感じとっていたのかも
しれないね…
双子は不思議な何かで繋がっているから。
智「和ね、検査が痛かったみたいで
病室に戻ってからも、しばらく泣いてた…」
「そっか…」
智「早く結果が出ればいいけどね…」
智にぃは言い切った後「ふぅ〜」って
苦しそうに大きく息を吐き出した。
俺らは病気の不安が大き過ぎて
和のメンタル面まで気が回らなかった…
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作者名：空
| 作成日時：2013年4月5日 8時
