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37.【18】 ページ37

[翔にぃside]

雅紀はドアの前から
動こうとしない。

「どした?」

顔を覗き込んだら、雅紀は俺からパッと目を
逸らして俯いてしまう。

雅紀はいつも、真っ直ぐに見つめて話を
してくるから、あまり逸らされた記憶がない…

黙って肩に手を置いたら、雅紀から口を
開いてくれた。

雅「…会うの、恐い。和の傍に付いてて
やれなかった、から…おれ、帰る…」

「おい、待て!」

手を掴んだけど雅紀はそれを無言で振り払って
俺に背を向けた。

雅「…おれ、いても意味ない、から…」

「今逃げたら、もう和に会わせないからな?」

気が付いたら俺は、歩き出そうとした
雅紀の背中に向かって厳しい一言を
投げかけていた…

振り返って俺を見た雅紀の目が潤んでる。

それでも、首を振って答えてくれた…

雅「そんなの嫌だ…
俺は和の兄ちゃんだもん…」

雅紀は、潤んだ目を隠すように手
でゴシゴシ擦って「俺、いける…
ありがとう、翔にぃ」って笑って
病室のドアを開けた。

和はドアの音に一瞬だけビクッとしたけど
雅紀を見てすぐにパッと笑顔になった。

和「雅にぃ!!ゲームしようって約束でしょ?
待ってたよ!!」

ベッドの上で体を揺らしながら「はやく、
はやく」って手招きする和。

雅「…うん、ごめんね。俺さ、和の検査の時、
最後まで傍に居てやれなかった…」

ベッドサイドの椅子に座った雅紀は
和を真っ直ぐに見つめて謝った。

和は突然のことに、キョトンとしてる。

和「…そうだったの?雅にぃの声、
聞こえた気がするんだけどな…」

雅「ごめんね。途中までしかいなかった…」

和「ふふ…おれも、最初のことしか
覚えてないからいいの。」

和はパニックになってるから、誰がいて
誰が居ないかは把握しきれてない。

それでも俺らは声を掛け続けて、
温もりを伝え続けようって決めたんだ。

雅紀はそのことを謝りたいんだろうけど、
和はそんなこと知らないから。

和「雅にぃ!俺がいいって言ってんだから
いいの!!ゲームしよーよ!!」

気にしない様子の和に戸惑いながらも
雅紀は一緒にゲームをしてやる。

和「楽しいね、雅にぃ!俺ね、ゲーム一緒に
やってくれる雅にぃがすきだよ!
検査の時に居てくれなくても、病室で待ってて
一緒にゲームしてくれればいい!!」

こんな小さな子でも、雅紀の辛い気持ちに
気が付いて気を遣うことができる。

優しい気持ちをもった子に育ったくれた…

和のその言葉を聞いて
雅紀はやっと笑ってくれたんだから。

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作者名: | 作成日時:2013年4月5日 8時

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