26.【7】点滴 ページ26
［翔にぃside］
先「可哀想だけど、
予定通り投薬のために
点滴入れるね」
和「…でてけー、やだー」
先生とカウンセラーが病室に入ってきた途端に
豹変したように泣き叫ぶ和を
俺と智にぃで抑え込む。
先「恐いもんね。泣いてても、叫んでても
いいからね。ちょっとだけ、頑張るよ。」
和「ぎゃー」
先「おしまい、おしまい。」
針を固定する前に智にぃに、体を抱きしめて
あげていいよ。と指示を出してくれた先生。
お蔭で和は、意識を飛ばす寸前で
智にぃに抱きしめてもらえた。
過呼吸になってしまった和の呼吸を
カウンセラーが整えてくれる。
俺は和の腕を抑えたまま、先生が固定する
サポートをしていく。
先「抜こうとするかもしれないから、
しばらくはガッチリ巻かせてもらうね。
気を付けて見てあげてね。」
「はい。」
先生は優しく笑って和の腕をそっと撫でた。
先「まだ10歳だもんね。病気って言われて
向き合うだけでも大変なのに辛いよね。」
声のトーンをおさえて、ゆっくり優しく話す
先生の声は落ち着く。
今の和はそこまでの余裕がないけど、
和にも聞かせてやりたいなって思う。
和「…ない。も、しない…あっちいって」
智「おしまいね」
カウンセラーの手を払おうとするのを
優しく抑制しながら智にぃは
和の耳元で優しく声を掛ける。
智「かず、頑張れてえらかったね。
おしまい。」
和「…わい。あっち、いって…」
和は智にぃにしがみ付きながらも
先生とカウンセラーを見て警戒してる。
先「嫌なことしてごめんね。」
だけど、先生が話し出すと
目を合わせようとしない。
拒否する気持ちが大き過ぎて
先生やカウンセラーの存在を
受け入れられない…
先生もカウンセラーも
本当に優しく微笑んでくれてるのに…
少し前までの和だったら「ねぇ、先生！」って
慕って、懐いていたに違いない。
先「翔くん…あと戻りして悔やむのは
やめよう？」
先生の声にパッと顔をあげたら
智にぃが心配そうに俺のことを見ていた。
カ「お兄さん達が苦しい時は
何でも話して下さい。でも、和くんの前では
揺らがない存在でいてあげて下さい。」
カウンセラーの言葉にしっかり頷く。
大丈夫、俺は一人で頑張るんじゃない。
自分に何度も言い聞かせてから
そっと和の頭を撫でた。
和は安心した様に目を細めて
俺を見上げてくる。
「頑張ったな。ゆっくりおやすみ…」
声を掛けながら頭を撫でたら
和はくたっと力を抜いて眠った。
薬がよく効いてくれた…
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作者名：空
| 作成日時：2013年4月5日 8時
