25.【6】長い夜 ページ25
［智にぃside］
面会時間の
ギリギリまで
家と同じ様な雰囲気を保って
和を病院に慣れさせようと頑張った。
心配そうな潤の手を引いて雅紀は家に帰り、
翔は何かあった時のために病院に
残ってくれた。
消灯時間が近付くにつれて、和は落ち着きを
なくし、何度もベッドから起き上がる。
ドアの前まで歩いていって
しばらく座り込んだり、窓から外を眺めたり…
「おいで、かず。」
和のベッドに座って呼べば戻ってくるけど
じっとはしていてくれない。
昨日もあまり眠れてないから
体はそろそろ限界だと思うんだけど…
消灯の時間になり部屋の電気が消されると
和はポロポロ泣いて縋ってくる。
「いるからね、大丈夫」
何度も声を掛けるけど眠るどころか
どんどん落ち着きがなくなっていく和を見て
心配になって翔を呼んだ。
「今から翔が来るからね」
驚かせないためにドアを指差して教えたら
和はベッドから降りて
ドアから一番遠い所まで逃げて警戒している…
翔「きたよ〜、どうした？」
和は翔をじっと見つめて立ち上がった。
翔「寝られない？おいで？」
翔が両手を広げてやれば和は安心したように
頷いて、その腕の中におさまる。
翔「眠くなる薬、もらってきたよ？飲む？」
和「…」
翔「かず？」
和「んーん…かえ、りた…」
翔「そうだね。かえりたいね…」
和「ん…わい…」
震え出した体をブランケットで翔ごと包んで
さすってやる。
「かず、お水あるよ。薬もらう？」
和「んーん、…ない…ねない…」
薬を押し返して、翔の胸に顔を押しつけて
泣き出す和…
翔「冷えちゃうからさ、ベッドいこうね…」
少し落ち着いたタイミングで翔が和を
ベッドに寝かせてくれた。
和「…ない、ねない…ない…」
ウトウトはするものの和は結局、ぐっすり
眠ることができないまま朝を迎えた。
和「…きちゃ、やだ…ぎゃー」
精神的な疲れも溜まり、寝不足で不安で…
機嫌が最悪のところにきた先生。
力の限り拒否して泣き叫んで、
朝の診察を終えた…
それでも先生は俺らに向かって優しく笑って
小声で呟いた。
先「点滴したら、鎮静剤入れて休ませて
あげられるからね」
状況は最悪で、不安ばかりが募るけど
先生を見てると何とかなる気がしてくるから
不思議だ…
なかなか落ち着かない和に、ひたすら
寄り添って声を掛け続ける。
だけど和は、何かされるんじゃないか…
誰か来るんじゃないかと、
体を硬くして構えている。
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作者名：空
| 作成日時：2013年4月5日 8時
