覚悟と、安堵 ページ23
目を覚ますと、見慣れぬ白い天井が視界に入った。辺りを見渡し、ここが病室だと分かる。窓を覗くと爽やかな朝日が顔を出していた。起き上がり、ぼんやりした意識をハッキリさせる。
.....爆豪くんは!?
傍で座ったまま寝ている切島くんを見つけ必死に揺さぶって起こし、藁をも掴む気持ちで私は尋ねた。
「ん゙.....起きたか.....A.....」
「爆豪くんは!? どこですか!?」
「んあ...? 爆豪...は.....A棟の...305号室...」
眠たそうな切島くんから情報を引き出した私は、裸足のままスリッパを履いて急いで病室を出た。走って、走って、やっと彼の部屋に着きドアを開けようとして、ふと手を止める。
もし開けた先で見える光景が、脳無に蹂躙された彼の惨憺な姿だけだとしたら。私は、もう立ち直れないだろう。
怖い。また、自分のせいで誰かを失うことが怖い。
ドアノブを持つ手が震える。見たくない。やっぱり私は弱くてちっぽけで、お母さんには程遠いな。
しばらく立ち尽くした後、意を決して扉を開けた。私が招いた事態だ。いくら怖くても、その結果を受け止め落とし前をつけなくてはならない。
どれだけ大きな代償でも背負う。そうすることが、私の贖罪だ。
.....しかし、爆豪くんは、そう簡単にやられるやつではなかった。彼は、酸素マスクも点滴も付けておらず、ただ穏やかな表情で眠っていた。
「は.....」
吐息が漏れ、緊張の糸がぷっつりと切れて、私は彼のベッドに突っ伏した。
.....良かった。
「生きててくれてる.....っ」
息遣いを感じる。熱を感じる。今、爆豪くんが温度を持って、ここにいる。彼の生をちゃんと確かめたくて、彼の手を握り目を閉じて自分の額に押し付けた。
「.....A?」
「爆豪くんっ.....爆豪くんっ.....」
「.....オイ、」
「爆豪くんっ.......!!」
「離せやクソチビ!! 」
急に起きた爆豪くんに繋いでいた手を払われた。冷静になって、私がかなり恥ずかしいことをしていた事に気づく。
「す、すみませんっ、爆豪くんが生きてたことが本当に嬉しくて、つい.....」
「はっ、あんな脳みそ馬鹿相手にやられるかよ」
そう不敵に笑う爆豪くん。
しかし、彼が起きてすぐにベッドに隠した腕にはぐるぐると包帯が巻かれていた。私を心配させまいと、そんな態度をとっているのだろうか。
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匿名希望より - 作者さんリゼロ好きですか?どこか既視感あるなと思いまして (2021年8月12日 2時) (レス) id: 84a09a672a (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - はるはるさん» コメントありがとうございます! こんなに長々と感想を頂けてとても嬉しいです。満足していただけて幸いです! (2019年5月8日 13時) (レス) id: c4af4231ab (このIDを非表示/違反報告)
はるはる(プロフ) - とても素敵な作品でした。終始涙が止まらないくらいに感動しました。爆豪勝己というキャラの良さが詰まっていて、満足出来ました。このような素敵な作品を作って下さりありがとうございました。 (2019年5月8日 2時) (レス) id: 0a19bd2b46 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - momoさん» コメントありがとうございます!確かに話を考えるのは大変ですが、作者の貧相な脳みそで精一杯物語を紡げるよう頑張ります! (2019年5月4日 23時) (レス) id: c4af4231ab (このIDを非表示/違反報告)
momo(プロフ) - いつも読ませてもらってます!展開が難しいかもしれませんが、更新頑張って下さい!応援してます! (2019年5月4日 23時) (レス) id: 0b1ff1fc69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真実 | 作成日時:2019年4月17日 18時