09.幼すぎた二人 ページ10
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殺風景な部屋の椅子に座り、アイツを待つ。
部屋の隅は警察が二人待機していた。
奥から足音が聞こえ、思わず椅子から立ち上がる。
ガチャリとドアが開くと、その向こうに居たのは綺麗な少女だった。
あの頃とは身長も風格もまるで違うが、間違いない。アイツだ。
『……うそ。おにい、ちゃん？』
アイツは、オレを覚えてくれていた。
それだけの事実が自分自身をひどく安心させてくれた。
「よう。」
扉の前で立ち尽くしているソイツを、警察が椅子に座るよう促す。
ソイツはたじろぎながらも、ゆっくりと椅子に腰かけた。
「………」
いざこうやって目の前にすると言葉が出てこない。
どんな言葉を掛けようか。そう考えていると、最初に口を開いたのは相手の方だった。
『会いたかった。』
顔を上げると、まっすぐな視線で俺を射抜く瞳がそこにはあった。
『会えて、よかった。ずっと会いたかった。』
「……俺も。」
結局、会って一言目がコレ。情けねぇな。
時間はたくさんある訳ではない。話せることは限られている。
けれど、ただ一緒に同じ空間に居られるだけで俺にとっては奇跡で、今この事実が何にも代えがたい思い出になるだろうと分かっていた。
『髪、伸ばしたんだ。触ってもいい？』
「好きにしろ」
親に言われるまま伸ばした髪を見られたくなくて縛ってきた。
お前に会うために伸ばしたと言ったら、どんな顔をするだろう。
縛っていた髪をほどくと、ソイツはゆっくりと俺の頭に手を伸ばす。
俺は、思わずその手をギュッと掴んだ。
『お兄ちゃん？』
「…あの日も、こうやってずっと手握ってたな。」
相変わらず小せぇな。
ソイツは、何も言わずに俺の手を握り返した。
『私ね、この手握ってたら何処にでも行ける気がしたの。』
「…ガンダーラ」
『！…覚えててくれたんだ』
忘れるわけがない。
この小さい手を握りながら、はぐれないように、独りぼっちにならないように
二人でどこまでも一緒に…
嘘じゃない。本気でそう思っていたんだ。
あの頃の俺達に”確かな明日”なんてものは無くて、
コイツを守れるのは俺しかいない。俺が守る。
ずっと傍に居てやる。
けど、そう思うにはあの頃の俺達はまだは幼すぎたんだ。
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りお - とっても刺さる素敵な作品でした(;o;)春千夜にも夢主にもガンダーラで幸せになってもらいたいと思いましたT^T (2021年10月31日 1時) (
レス) @page17 id: fffe7db0be (このIDを非表示/違反報告)
れいん(プロフ) - 寝る前に読んでみたら 一つ一つの言葉が凄く刺さって 涙出ました (2021年10月31日 0時) (レス) @page16 id: 817f921072 (このIDを非表示/違反報告)
Ibibubu(プロフ) - 本当に作者様の書いた作品が凄く好きで、素敵な作品をありがとうございます (2021年10月29日 23時) (レス) @page18 id: 9aefec9a34 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ - すごいな、これ… (2021年10月29日 1時) (レス) @page18 id: 0e789b8f74 (このIDを非表示/違反報告)
不夜城・レイス(プロフ) - 一行一行が凄い感動しました(泣) これからも応援してます！ (2021年10月28日 19時) (レス) @page12 id: 23f9dcf647 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：平
| 作成日時：2021年10月24日 21時
