あの日のキボウとあの日のコトバ ページ30
「すみません、私が今の段階で話せるのはここまでです…ごめんなさい…」
私はやっぱり自信がなくなっていって、最後は皆の顔を見る事ができなくなっていた
皆はひと言も喋らずに私の話を聞いてくれていた
でもそれが逆に私の恐怖を引き立てていた
引かれたかもしれない
私が心の中でそう感じ始めた時
「…そうか…大変だったんだな…よく勇気をだして話してくれた…
ありがとう」
近藤さんだった
私は顔を上げた
その後の話をしない私を責める事も無く、聞き出す事もなく、近藤さんは、皆は、優しい視線を私に注いでくれていた
そうだ
この人達が私を否定する訳ない
だから話したんじゃないか
「ありがとう…ございます……」
自然とそんな言葉が出てきた
「おいおい、オウム返しになってんぞ」
土方さんが呆れた、でも微笑みながら言った
すると…
「なァ、今もAは本当の親を探してンだよなァ
ならそれ、俺達も手伝わせてくれよ
…いや、手伝いまさァ」
突然だった
急すぎて上手く言葉を返せなかった
でも、迷う事のない言葉だけは出てきた
「…探してます、ずっと
いつか会えるって信じてるから……
いつになったって大好きだから……」
「それ聞いて安心したぜ
人探しなら、俺達、万事屋銀ちゃんって決まってんだろ
なぁ、新八、神楽?」
「そうですよ!どっかの訳の分からない謎生物探して変な皇子に会うより、よっぽどやりがいがあります!」
「もちろんアル!私、歌舞伎町の女王が手伝うからには、どんなものであろうと嗅ぎ分けられるネ!」
「それは食いモンだけだろーがー!」
「______………」
「どーだ、江戸の町は。なあ、お嬢さん?」
またいつものワイワイムードに戻った皆を前に、近藤さんが問いかけてきた
私は、微笑んで迷うことなく応えた
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「いい人達と働けるホワイト企業のある、優しくて温かい町です」
あの日の「ようこそ」という3人の言葉と表情が鮮明に蘇ってきた
この人達となら、本当に見つけられるかもしれない
私の中に希望が…あの時の信じるだけのものとは違うはっきりとした希望が、確かに形を成し始めていた
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だから、この時はまだ誰も予想してなかったんだ
この形を成した希望が、容赦なく打ち砕かれる事になることも
それが、希望が叶うことが原因になってしまうということも
この時は、まだ誰も知らなかった
習うより慣れろ。慣れるより逃げろ。→←またね______……
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作者名:*kuro* | 作成日時:2019年6月9日 23時