骨の髄まで囚われて―異形の狂依存―

五十五話 占脳 ページ6

side月狂

あれから数十分…。
Aの身体は、徐々に熱を帯びてきた。
少し触れる度にびくりと身体を震わせるその姿は、最上級に俺の毒占欲を煽った。

月狂「Drum Gottes Segen über dir,
du meines Lebens Freude.」

A「………？」

ドイツ語のクラシック歌詞を口に滑らせれば、困惑とした様子の彼女。

嗚呼、いじらしい。

月狂「Gott schütze dich, erhalt dich mir,
schütz und erhalt uns beide.」

A「ベートーヴェン？」

月狂「正解。」

口角を吊り上げ、頬を指先で撫でれば、紅潮させて擽ったいと甘い声を漏らす。

それ、誘ってるの？

A「あのね。」

桜色の唇から、ピアノの音色よりもずっとずっと美しく、甘い声が零れ落ちる。

A「『誰かの為に生きる人生には価値がある』って、アインシュタインが言ってたんだよ。」

A「私はね、月狂の為に生きたいんだ。」

人生には、二つの道しかない。

一つは、

奇跡などまったく存在しないかのように生きること。

もう一つは、

すべてが奇跡であるかのように生きることだ。

これも、アルベルト・アインシュタインの言葉だった。


Aが俺だけの為に生きたいと願う。

其れは俺が、ずっとずっと望み続けた願望であった。
俺がAだけの為に生きてきたように、彼女にも俺だけであって欲しいと。

それを願い続けて、願い続けて、


それが漸く叶った。



かつての世界観を壊し、新たな世界観を植え付ける。


それを愚かで哀れな万人は

『占脳』と呼ぶんだっけ？

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