罰ゲーム (ページ47)

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すばるが脱退するってなって、最後に2人で飲みに行った時やった。
珍しくすばるはガチトーンで俺に言った。

『ヨコとちゃんと話せぇよ』

質問でもなく、お願いでもなく、命令に近いもんやった。
俺はそのすばるの言葉に返事も出来んと唾を飲み込んだ。

結局、すばるとの約束(というか命令)は未だに果たせてない。
今後も果たすつもりはないし、墓場まで持って行く予定。

けど、ヨコのあんな悲しそうな表情を見たら確信もなくなってしまった。

俺の事であんなに必死になるヨコが可笑しくて堪らんのに、涙が出そうになってしまった。
結果、喧嘩みたいな雰囲気になってしまって他のメンバーに心配をかけてしまう始末や。
情けない、40にもなってなにしてんのやろ。

「村上さん、着きましたよ」

「…………あ、ごめんごめん！！おおきに！」

「帰りはどうしますか？」

「迎えはええよ！家も遠ないし、歩いて帰るなりタクシー呼ぶなりするわ」

「…………無理しないでくださいね？この前倒れた時、本当に心配したんですから」

「そん時はホンマにごめんなぁ。最近はちゃんと寝れてるし大丈夫やで」

「それ、ちゃんと横山さんにも伝えてあげてくださいね」

ーーﾄﾞｷｯ

なんでヨコだけやねん。
他のメンバーにも、やったら納得やけど。
なんで、ヨコにだけ伝えなあかんねん。

「あの時なんだかんだ一番焦ってたの横山さんでしたし、その後も僕らマネージャーにも凄い怖い顔して村上さんを連れて帰るって言ってきたんですから」

もうやめてや。
その話はもう聞きたない。
これ以上俺の決意を壊さんでや。

「…………村上さん？」

「あ、そ、そうやったんやな！知らんかったわぁ。とりあえずヨコにも言うとくし、今日はもう帰り〜」

「了解しました。じゃあお疲れ様です、また明日迎えに行きます」

「あいあい〜」

今はキーボードに全ての想いをぶつけたい。
前までなら居てくれたすばるは居らん。
ここまで吐き出しそうなんは久しぶりやから、他のメンバーにあってもおかしなってしまうかもしれへん。
とりあえず、安には申し訳ないけどソッとしてもらお。

スタジオの近くに行けばギターの音が聞こえてきて、俺は安に見せる笑顔の準備をした。
大丈夫、安なら俺の事わかってくれる、すばると似た奴やから。

そう思って扉を開ける。

「…………ヒナ」

そこに居たんは安やなくて、ヨコやった。
限界ギリギリやった俺はヨコの顔を見ただけで涙がポロポロと零れた。