青side ページ39
気まずい、何かが苦しい。
久しぶりの5人でのテレビ収録の楽屋やのに、前までのわちゃわちゃが全然ない。
横ちょとヒナちゃんは故意的に話そうとしない。
丸はまた最近ずっと様子が可笑しくなりつつある。
大倉は、ずっと丸のことを気にしてる。
なんや、この空気。
「なんか飲み物買ってくるけど、みんなは要る?」
「じゃあ俺も着いて行くわ」
ヒナちゃんはそう言って立ち上がった。
その様子をチラッと横ちょが見たけど、すぐに目を逸らす。
丸は「僕は大丈夫〜」と手を上げる。
大倉は「珈琲お願いしてもいい?」と呟く。
ヒナちゃんは「あいあい」と言い出て行った。
横ちょの聞いてないやん、なんて言わんくても多分大丈夫。
ヒナちゃんは横ちょの欲しい物を知ってるから。
やから、俺もその後を追って出て行く。
「着いてきてくれてありがとうね」
「ええよ。俺も何買うか悩みたかったから」
そう言いながらも購入を進めたのはブラック珈琲。
多分、それが横ちょのやつ。
「ヒナちゃん」
「ん?」
「横ちょと、喧嘩してる?」
「…………。」
誰かが言った“無言は肯定”理論。
今のヒナちゃんは正しくそれやった。
「先週ぐらいからやんな?ずっと空気変やで?」
「…………ヨコは悪くないんよ、俺が悪い」
「ヒナちゃん、そんな話はないで?片方だけが悪いとか、片方だけが正しいとか、そんな話は絶対にないねん」
「…………今回ばかりは、ホンマに俺のせいやわ」
「ヒナちゃん………」
「…………迷惑、かけたないねんけどな」
いつからかヒナちゃんは横ちょに甘えることを止めた。
それは、多分渋やんが居ったからもある。
でも、そんな渋やんも居らんくなって余計に酷くなった。
信頼してるし、頼ってはいる。
やけど、それ以上は絶対に踏み込まない。
なんなら、最近ヒナちゃんをめっちゃ気にしてるのは横ちょなぐらい。
「迷惑なんて、横ちょは思ってはらへんよ」
「うーん………」
「何がそんなに心配なん?横ちょに何をそんなに気使ってんの?」
ヒナちゃんは口をモゴモゴさせながら自分の分をやっと選べたらしい。
買ったのは結局横ちょの分と同じやつやった。
「セーブしておかないと、全部乗っかってまうから」
それを多分横ちょは願ってるのに、とは言えへんかった。
やって、ヒナちゃんの表情は今にも泣きそうやったから。
“泣き虫ヒナちゃん”と呼ばれてる意味がわかってしまうほどの泣きそうな表情やったから。
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作者名:ひなまる | 作成日時:2022年6月27日 17時