短編小説 /純白のドレスは/ ページ13
――――『額にキス』
純白のドレスは、喜びを表すものだと勝手に思っていた。
いや、それは間違っていないと思う。本人からすれば、だ。
「おめでとー！」
「いやあ、良かったね！」
「ついにお前も結婚か……」
拍手、賛辞の声、すべてが疎ましく感じる。
「おめでとう」
それでも彼女は、にっこりと笑って祝福するのだ。
「良かったね」
そんなこと、微塵も思っていないのに。
「幸せになってね」
こんなに華やかな場所に私の存在は似合わない。早く帰ろう、と彼女は踵を返す。
「待って！」
途端、新婦に呼びとめられる。足を止めたものの、振り返る気にはなれなかった。
「お願い、話がしたいの……」
新婦の声は、微かに震えていた。
「こんな人気のないところに連れてきて、どうするつもり？」
彼女は感情を抑え、出来るだけ冷静にそう尋ねる。
「…………」
新婦は俯いたまま何も答えない。
「何もないんだったら帰るわよ？私は忙しいの」
「…ごめんなさい」
やっとのことで新婦が絞りだした言葉は、その六文字。
「……は？何でアンタが―――」
ぽたり。
新婦の持つブーケに涙がひとつ、零れた。
「ちょっと……！」
「ごめんなさい、ごめんなさい……！」
――――何で、
何でアンタが泣くのよ？
――――泣きたいのは、こっちだよ。
「…知ってた、よ。彼のこと、好きだったこと…」
新婦はまたぽろぽろと涙を流し始める。
確かに、彼女が彼のことを好きだったのは事実だ。
しかし、決めたのだ。新婦のためにも、彼―――新郎のためにも、このことは黙っておこうと。
「彼は…悪くない。告白したのは、私の方…だから」
「別にそんなこと聞いてないでしょ！？」
思わず声を荒げる。
「祝おうって、決めてたのに！何事もなかったように、おめでとうって…」
彼女の目からも涙が落ちる。
好きだから。
大好きだったから。
彼の幸せを、親友の幸せを、願おうと。
綺麗ごとかもしれないけど、それでも―――
そのあとは、二人して大声で泣いた。
大の大人が泣きじゃくっている姿は、何だか滑稽で。
ぼろぼろと大粒の涙を流しながら、二人は可笑しそうに笑う。
彼女は優しく新婦の頭を撫でると、彼女の目線より少し低い位置にあるその額に、軽くキスをした。
「幸せになってね」
今度は、心からの言葉で。
――――『祝福・友情』
短編小説 /愛してるから/→←短編小説 /この想いは、ずっと/
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容姿端麗に生まれ変わり隊(プロフ) - 『頬』と『額』は親しみ感が溢れてていいと思いました(o^−^o) (2019年4月29日 13時) (
レス) id: 26de7c6d79 (このIDを非表示/違反報告)
沖蘭 - ちなみに頬へのキスは海外だと挨拶に近いですね。私も海外に住んでいるので親しい人とは頬にキスします。 (2017年2月26日 6時) (レス) id: 63d7861522 (このIDを非表示/違反報告)
沖蘭 - 月が綺麗ですねから来ました！！鼻梁は鼻筋の事ですよ。面白かったです！こんなことをしてくれる彼氏が欲しいです。続編も楽しみにしています！頑張ってくださいね！！ (2017年2月26日 6時) (レス) id: 63d7861522 (このIDを非表示/違反報告)
零ーﾚｲー(プロフ) - とりあえず完結しました〜！皆さま本当にお付き合いありがとうございました<(_ _)>近々続編を作るつもりなのでそちらも是非よろしくお願いします！ (2017年2月11日 23時) (レス) id: 79ca697b23 (このIDを非表示/違反報告)
零ーﾚｲー(プロフ) - のわあああ、意味が意味なのでヤンデレ続きになって申し訳ないです……全然純愛じゃない…キスの格言に相応しくない…… (2017年1月31日 20時) (レス) id: 79ca697b23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：零ーﾚｲー | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/hina99121/
作成日時：2016年8月31日 18時
