万事屋の坂田くんは狼少年を愛しすぎている(参)

１１３ 愛 ページ26

ｰｰ茨sideｰｰ




なんでコイツらは殺される状況でこんなに強く見てくるのか分からなかった



今まで殺した人はまるで化け物を見るように私を見て、逃げて、自分の命だけは助けてくれと懇願してきた

なのになんで…！




殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ！！




そう思っても何故か腕に力が入らず、弓矢を落としてしまった





気が付くと一筋涙が頬を伝った





神「茨…」


茨「っ、煩い！！！
殺してやる！！！」





床の弓矢を拾おうとしても上手く力が伝わらない



なんで、





新「なんであんな人…
叶の言う事を…
茨さんは人を殺すことの苦しみも、痛みも知ってるはずでしょう…？」





あんた達に私の気持ちなんて一生分からない！




茨「私には叶様しかいない！！
叶様だけが私の味方で…いつも…傍に居て愛してくれたんだ！！」




分かって欲しくないッ！！




茨「叶様だけが、両親が死んで一人ぼっちの私に手を差し伸べてくれた！
人を殺すのなんて怖くない！人を騙すのなんて辛くないの！！
それが望まれている事なら…！
何だってやる！
あの人の…叶様のためなら…！！」




地面に落ちた掴めない矢をみながら、怒鳴るように吐き出す



するといつの間にか目の前まで来ていた腕が私の肩を抱き寄せた





茨「…え？」



神「もういいアル、茨…
もう、苦しまなくていいネ
嘘つかなくていいネ」



茨「なんで…アンタが泣くんだよ！！！
泣いて欲しいなんて思ってない！同情なんていらない！！」



神「同情なんかで泣いてあげるほど私は優しくないヨ
友達だから…
友達が泣けずに苦しんでいるなら、私が代わりに泣いてあげる…怒ってあげる…それが友達っていうモンでしょ？」



茨「はっ、めでたいアタマ！！
アンタなんて友達じゃない！！
私はアンタを殺そうとしたのよ？！
躊躇なんかしなかった！」


神「でも、私達と一緒に居た時の笑顔は全部が嘘じゃなかったと思うから…
1度でも本気で笑い合えたら、それはもう友達アル」


茨「！！」


新「…それに、茨さんが本気で僕らを殺そうとしてたら最初の一撃で勝負はついてましたから。
殺したくなくて、追い返したくて、最初の一撃を外したんですよね…？」







ふっと笑う二人を見て、
わたしの目から涙が溢れた

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