音柱は嫁依存症

杏寿郎さん、ありがとう。 ページ21

できれば、もう喋らないでほしい。

少しでも長く生きてほしい。


こんなのって…、

神様は残酷だ。




煉獄様はゆっくりと

私の手を包み込んだ。



煉「A、好きだ。

前はしっかりと口にできなかったし、

君は宇髄の嫁だから

気持ちだけ受け取ってもらえないだろうか」

『はいっ、はい…っ』


ついに溢れた一粒の涙を

煉獄様が親指で拭った。



煉「そんなに…泣かないでくれ。

好きな人を守れたのなら

俺はとても嬉しい。


君がどんな形であれ

幸せに生きてくれるのなら

それは俺にとっての

幸せでもある。


今回は本心だ。




A、幸せになってくれ」


『煉獄様が、いなかったら、

私、寂しいですっ…。

煉獄様はお友達なのに。

1番のお友達なのに…っ』


煉「1番と言ってくれてありがとう。


大丈夫だ。

君には宇髄がいる。

ここにいる全員が、

鬼殺隊全員が

君の味方で友達だ。



俺も、

君をきちんと見ているから。

もし天国が存在するならば

空から君を見守る」



本当に、最後なんだ。


煉獄様はもうすぐ

この世からいなくなるんだ。


こうして喋るのも

最後だなんて。




『煉獄様は嘘つきです。

甘味処に行くって、約束したのに』


煉獄様は力無く笑った。


煉「ハハッ…。

それは、本当に申し訳ない。


A、代わりに

新しい約束をしよう。

破ったら、怒る」

『なんでしょう…』


煉「次…、俺たちが会うのは

君が…おばあちゃんになってからだ…。


君が寿命を全うした時…

また、会おう…」





生きなきゃ。

ここで悲しんでも、

煉獄様は生き残らない。


私のすべきことを果たし

煉獄様が願ってくれている通りに

幸せにならなきゃ。



『約束、します…！』


涙を拭いて

口を大きく開けて

にっこり笑う。


煉獄様は眉を下げ

優しく笑った。




煉「最後に…、見るのが

君の笑顔で良かった…。



俺の、名前を

呼んでほしい……」





どんどん煉獄様の

話す速度が遅くなっていく。






『杏寿郎、さん』


煉「うん。ありがとう。


さようなら。

また、会おう。





好きだ、A……」






煉獄様は私たちの向こうを見た。


誰もいない場所。





煉 (母上。


俺はちゃんとやれただろうか。


やるべきこと

果たすべきことを

全うできましたか？)



“立派にできましたよ”





煉獄様は最後、

ほがらかに

安心したように笑って

ゆっくり目を閉じた。

天元様、驚きました。→←煉獄様、もう。

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