来訪者 ページ36
朝食を終え部屋へと戻る兄を見送り、厨房へ顔を出す。
美味そうな香りで充満しているそこへ声を掛けた。
「粥はできておるか？」
「ええ、出来ておりますよレオポルド様。こちらです。」
土鍋を乗せた盆を差し出され、受け取る。
蒸気穴から立ち昇る湯気が中の熱さを物語っていた。
ほのかにごま油の香りもする。
中華粥だろうか。
「すまぬな、また返しに来る！」
「こちらもお持ちください。」
「！ 助かる、ありがとう！」
添えられたのはアイスクリーム。
その心遣いが嬉しく、口元が綻ぶ。
熱に浮かされている身にはきっと心地よい冷たさだろう。
足取り軽く、Aの部屋へと向かう。
本人は気付いていないだろうが、見守る周囲の視線はとても優しいものだった。
ーーコンコン。
控えめに扉をノックする。
様子を伺うが、返事は無い。
寝ているのだろうか。
「A？俺だ、粥を持ってきたぞ！」
大きすぎないよう、しかし中にはちゃんと聞こえるであろう声量で声を掛けつつ再度ノックをする。
ーーー俺は、知っている。
この扉は今は鍵が掛かっていない。
Aをベッドに寝かせた後、この部屋を出たのは自分だ。
内鍵を掛けられる訳もないので気にかかったものの、そのままにして執務室に戻ったのだ。
(……入るか？)
そんな考えが一瞬過ぎったが、今朝の事を思い出してすぐさまその考えを否定する。
どうしたものか、このままではせっかくの粥は冷めアイスは溶けてしまう。
出直すか。
その考えに至った時、ようやく中から反応があった。
ーーガチャ
「ごめん、お待たせ。どうぞ。」
熱のせいで赤い顔をしたAが扉を開けて俺を中へと招く。
その様子がいつもと違うせいなのか、得体の知れないムズムズした感情が己の中で蠢いた。
何故かそれを悟らせてはいけないと思い、突き動かされるように口を開く。
「粥を、用意させたんだが食べれそうか？無理ならこちらだけでも胃に入れた方がいいぞ！」
「ありがと、貰っていい？」
「おう！」
手にしていた盆ごとAへと渡す。
Aは鍋の蓋を開けて少しずつ食べ始めた。
「おいし、ありがとうね。」
「あぁ。…体の方はどうだ？」
「んー、風邪じゃなくて熱だけだから少し寝ればすぐ治ると思うよ。」
「そうか！」
赤らんだ顔の彼女が粥やアイスと食べるのを見ながら、己の中に感じる謎の感情の意味を考える。
ついぞ答えは出なかったが。
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緋毬(プロフ) - まゆさん» 感想ありがとうございます！今の所いい勝負なのでまだどっちに転ぶかわかりませんね…（笑）私も書いてて楽しいです(*´艸｀*) (2019年4月7日 17時) (
レス) id: ef0ebcf362 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ(プロフ) - はじめまして！私はフエゴレオン様が大好きなので、ぜひそっちとまとまって欲しいです。あぁ……でも嫉妬するフエゴレオン様も見てみたい……(///∇///)ゞ (2019年4月7日 14時) (レス) id: 8902c85bfe (このIDを非表示/違反報告)
緋毬(プロフ) - ありがとうございますヾ(*´∇`*)ﾉ頑張ります！ (2019年4月4日 17時) (レス) id: ef0ebcf362 (このIDを非表示/違反報告)
ジャンプ - 面白かったよ (2019年4月4日 16時) (レス) id: ea5f79410c (このIDを非表示/違反報告)
緋毬(プロフ) - ありがとうございます、今の所いい具合に進められているので、頑張って走ります(*`･ω･)ゞ (2019年4月4日 9時) (レス) id: ef0ebcf362 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：緋毬 | 作成日時：2019年3月31日 23時
