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彼女を見かけたのは、僕が名古屋で働き始めて2年目くらいの頃からやった。


僕が働いてるんは名古屋にある喫茶店で、家から出勤する道中でいつも彼女とすれ違っていた。

仕事をしているのか、毎週月曜日と金曜日が彼女とすれ違える日やった。



午前7時半。
月曜日と金曜日。
店に到着する5分前。
決まってその時間に何度も何度もすれ違う彼女を、僕は自然と好きになっていってた。


どこが好きなのかと問われれば、言葉にしにくい。
なんて言うか、一目惚れやない。
僕の完全なる片想い。声すら聞いた事無いし彼女の性格も好きなものとか、個人情報なんて何一つ知らん。

けど、好き。


よく「どんなタイプが好き?」「好きになった人がタイプ」ってやり取りあったけど、まさにそれ。
うまく説明出来へんけど、そんな感じなんよ。察して。


とにもかくにも。
むっちゃ、好き。


・・・とは言ったものの、彼女に話しかける勇気なんて僕にはなくて。
かと言ってわざと物を落として拾ってもらって手間かけさせたないし、わざとぶつかって迷惑かけたないし・・・。

僕と彼女の関係は、ずうっと縮まらん。
僕にとって彼女は「好きな人」でも、彼女にとって僕は「通行人」でしかないんやもん。


「こんにちわ」って、「はじめまして」って。
言いたい。
彼女の声、聞きたい。
彼女のにこって笑う表情、見たい。



・・・でも、距離は縮まらん。
そんな日々が、2年続いたある日の月曜日。




『プレイミュ・・・』




いつもの時間、いつものすれ違う場所。
でも、その日は少し違っていた。
彼女が立ち止まって、スマホを操作していた。歩きながらのスマホは危ないから、街路樹の近くで操作している。偉いなあ。

マップ検索でもしていたのか、スマホから流れたナビ音声を慌てて低くする。
・・・操作慣れてへんのかな。かわいい。


で、その週の金曜日。
彼女はすれ違わなかった。

翌週の月曜日も。金曜日も。
そのまた翌週の月曜日も・・・金曜日も。


好きな人に会えないのが、段々と苦痛になっていった。
僕の中では、「彼女とすれ違う事」が日常になってたんやろね。



・・・・・・病気でもしたんやろか。
もしそうやったら心配やな・・・。
あ、せや・・・そう言えばあの時・・・音声ナビでプレイミュ・・・なんとかっていってたやんな。

居ても立っても居られずに、検索してみる事にした。

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設定タグ:歌い手 , 恋愛   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:暇犬 | 作成日時:2018年3月18日 5時

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