309：俺の夢、私の夢 ページ13
「そんなこと考えてたら……なんか、寂しくなっちゃって」
サトシが顔を跳ね上げると、Aの頬に一筋の涙が伝っていた。
「A……？」
「ごめん…、変だよね。私、みんなと旅したのってすごく短いのに。…でも、っごめん…、止まんないや」
Aの瞳からは、とめどなく大粒の涙が溢れ落ちる。彼女はそれを止めようと拭うも、膜を張った双眸からは涙が溢れ続ける。
「歌手にならないかって言われて、すごく嬉しかった。けど、私が夢見てもいいのか分からないの。サトシ達といつか別れなきゃいけないことなんて、ずっと前から分かってたのに…このまま旅が続けばいいのにって、思っちゃうんだ」
サトシはその言葉に、心にかかっていた靄が晴れたようだった。
自分が素直に喜ぶことができなかったのは、彼女と同じように寂しさを感じていたからだと分かったから。
Aの中で、自分達は特別な存在だったのだ。サトシがAを想うのと、同じくらい。もしかしたら、それ以上。
共に旅をした時間は短いのに、別れの寂しさに涙を零してしまうくらいに。
サトシには、それだけで十分だった。
彼女の頬に手を伸ばし、指でそっと涙を拭う。
おそるおそるこちらを見るAに、柔らかく笑いかけた。
「サトシ…」
「なあ、A。誰がどんな夢を持って、どんな夢を追いかけても、何だってしていいと思うんだ」
彼女が自分達を大切に思ってくれている。その事実と共に、サトシはもう１つ気付いたのだ。彼女が、夢を見つけかけていることに。でも、それを追いかけていいものか迷っていることに。
彼女の言う通り、つい最近まで夢どころじゃなかったのだから、悩んでしまうのも仕方ないだろう。
「…サトシには、『夢』ってある？」
そういえば、彼女にはまだ話したことはなかったっけ。
サトシはベンチから立ち上がると、手摺りのところまで前へ出て、満天の星空を見上げて言った。
「俺の夢は、ポケモンマスターになること！」
旅立ちの日からずっと…いや、それよりも前から抱き続けている、自分の夢。
「俺はその夢を叶えるために、仲間と、ポケモン達と一緒に旅をしてる。もっともっと、一緒に強くなるんだ！」
Aはサトシのしっかりとした言葉を聞いて、感銘を受けたように瞳を揺らした。
サトシだけではない。
ヒカリも、タケシも。
みんなが夢を持っている。
…私は？
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こうもり(プロフ) - 時間の止まったリスさん» ご感想ありがとうございます！DPはリメイクもされたのでおすすめです！パートナーとの冒険はすごく楽しいですよー！ (2022年4月30日 21時) (
レス) id: 9309100d6a (このIDを非表示/違反報告)
時間の止まったリス - これを機にポケモン始めようかな、なんて思いました(めちゃ時代遅れですね)。リスはピカチュウとポッチャマ時代で止まってますので。へへ (2022年4月26日 10時) (レス) id: d39a98933d (このIDを非表示/違反報告)
こうもり(プロフ) - 緑茶さん» こちらこそコメントありがとうございます！DPいいですよね…！！長いお話を読んでくださっただけでなく感想までいただけてすごく嬉しいです、ありがとうございます！ (2020年7月31日 20時) (レス) id: a41badf38a (このIDを非表示/違反報告)
緑茶(プロフ) - たまたま見つけて気付いたら全て読んでいました。DP私も好きなのでとても面白かったです。自分の夢に向かって歩き出す彼らを見ていたら涙が止まりません。素晴らしい物語をありがとうございます！ (2020年7月31日 1時) (レス) id: ab02c22683 (このIDを非表示/違反報告)
こうもり(プロフ) - moekaさん» コメントありがとうございます！最後のページに一覧を載せておきました！ (2020年2月22日 6時) (レス) id: a41badf38a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こうもり | 作成日時：2017年1月1日 20時
