治崎少女の奮闘日記【ヒロアカ×文スト】vol.1

Episode.27 ページ29

足音、呼吸音、衣擦れの音、話し声。


それらをポートマフィアの本拠地のビルの壁に背中を預けたまま、聴いた。


……事の顛末はこうだ。与謝野さんと話をしながら、応接間にいた敦くん達の会話も聴いていたところ、どうやら太宰さんが行方不明らしい。


太宰さんは独り言が多いので私の集音の個性が届く範囲にいれば声を拾って大抵見つけられるのだが今回は見つけられなかった。


川にも拘置所にも地面の中にも居ない。しかも携帯も通じない。……と、ここで私は携帯のメールボックスに届いていた一通のメールを見つける。


“Aちゃん、私ポートマフィアに捕まるから助けに来てね♡
来て呉れないと私殺されちゃうかも。”


女々しいハート付きのそのメールを見た瞬間色々察し、“死ね”と2文字だけ返信してみたが、携帯の電源が入っていないだとか何とかで出したメールが帰ってきた。

しかし太宰さんを助けるのは些かやる気が出ない。ので、ヒーローコスチュームを一式揃えて少し気合を入れたのである。

……見つけたらとりあえず1発殴ろう。そうしよう。


そう決めて私はポートマフィアの見張りと監視カメラの間を縫い、辿り着いたのは地下の牢獄らしき場所だった。



牢獄の鍵は開いていた。躊躇なくそこを開き中に入る。


すると私の方を見たのは2人。1人は太宰さん。もう1人はオレンジ髪の知らない人。


「ンだ手前……って女じゃねェか。」


少し目を見開いたオレンジ髪の男を無視して私はカツカツと革靴の音をさせながら太宰さん達の目の前までやってきた。



「其れ以上近付くな、俺ァ女だからって容赦しねェぞ。」


そう言って少し拳に力を入れた男のことを思いっきり睨みつけながら、
「うるせぇチビ。黙ってろや。」
なんて言うと、
「誰がチビだ！」
なんてキレて突っかかってくる。


「何。君まさか身長気にしてたの？ま、チビだもんね、何センチ？」

「手前ェ……殺すぞ。」

「やれるもんならやってみな。」



すると男は私に蹴りかかってきた。スピードもパワーもある。そして蹴りをくらった瞬間衝撃と同時に身体に感じた違和感。

……重い。

どうにか立ち上がったまま耐えていた私の腹にさらに蹴りが入る。アバラが折れる音がした。


そうして何発か蹴りをくらいボロボロになった頃、男は私の頭を鷲掴みにした。

「さて、太宰。此の女の命が惜しけりゃ手前ェの算段を吐け。」

なんて。私を人質にしようだなんて、いい度胸してる。

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