▼ さんじゅうに ページ33
「…あの、真澄くん?」
彼が抱きついてから何秒たっただろうか。
さすがにこのままではいたたまれなくなって彼に声をかけても、彼は返事をする素振りもない。
が、しばらく経つと、小さ口を開けてぼそりとつぶやくように言った。
「…ほんとは、監督にいつもこうして抱きつきたい」
「え?」
「でも、できないから…アンタで我慢する」
……うん……?(困惑)
つまり、俺は今監督の…いづみの代わりとして抱きつかれているということ?
なんとも言えない複雑な気持ちで彼を見るが、何故か真澄くんは満足気なので何も言うことは出来まい。
猫のように擦り寄る真澄くんに苦笑いを零し、片手で頭を撫でてやれば、彼は花を咲かせたように笑った。
そしてその後、とんでもない爆弾を投下する。
「…俺、アンタのことそんなに嫌いじゃない」
「…え、ほんとに?」
「何度も言わせるな」
ふい、と抱きついたままそっぽを向く彼の耳は真っ赤。
彼の口から出てくるとは思わなかった言葉に俺は言葉を失う。
以前は『嫌いだ、近寄るな』と警戒心むき出しの猫のように俺を睨みつけていたのに。
それがどうしたことか、現在目の前にいる彼は警戒心むき出しの猫から一変、飼い主に甘える猫のようである。
嫌いじゃない、という言葉が彼の口から出てくることは予測していなかった。
俺が唖然としている間に、今日は機嫌がいいから手伝う、といって真澄くんは皿を拭きだしている。
……とりあえず、警戒対象ではなくなって好感を持ってもらえた、と思ってもいいのかな。
ありがと、と言って彼の頭を撫でながら、
俺は真澄くんとの関係が見えない壁を乗り越えたことに密かに喜びを感じていた。
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める(プロフ) - ま、ます、真澄くんのとこで昇天しました…最高…( (2020年9月26日 2時) (レス) id: 0fd2e5e0a5 (このIDを非表示/違反報告)
千里(プロフ) - えええ久しぶりの更新めちゃくちゃ嬉しいです待ってました、、、これからもずっと待ってるので、更新楽しみにしています(;_;) (2020年6月21日 15時) (レス) id: 290ff80d8c (このIDを非表示/違反報告)
犬田(プロフ) - 幸くんが最高に可愛いです…夢主くんもめちゃめちゃかっこよくて好きです!!更新応援してますね! (2019年12月31日 2時) (レス) id: 4889f7f66e (このIDを非表示/違反報告)
吹雪(プロフ) - 続きすごく気になります!更新無理しない程度にガンバってください!!!!!!応援してます (2019年12月14日 19時) (レス) id: e54dafa9c8 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - すごくいい!すごく面白いです!!BLはちょっと無理なんですが、そういう感じじゃなくて、なんか、、こう見ていて普通に逆ハー!って感じで好きです!!これからも頑張ってください!応援してますー! (2019年10月30日 21時) (レス) id: 0a78293a93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あいす | 作成日時:2019年10月10日 15時