▼ かんとく の もとかれ が あらわれた！【A3!】

▼ にじゅういち ページ22

｢女性客の引き寄せ…ですか｣


｢そうだ。今回の公演はどうやら女性客が少ないらしい｣





稽古もいよいよ大詰め、といったところか。

どうやら俺の知らないうちに公演のチケットは既に販売開始しているらしく、売上はいつも通り上々＿＿



と言いたいところだが実はそうでは無いらしい。




目の前に座る彼、左京さんが言った通り今回は女性客が少ないそうだ。(なんでそれが分かるのか俺には不思議なことこの上ないことである。)





しかしその状況に頷ける俺もいた。



何せ今回はどちらかと言うと男性の好奇心をくすぐるような作風である。

当然、フライヤーや宣伝のためのポスターなども台本の作風に合わせているため、どうしても女性の興味を引くことが難しいらしい。


稽古を見たり台本を読んだりした俺には分かるのだが、お客さんはそうとは限らない。




そして女性のお客さんは割と大事なものだ。



女性が持つ社会への影響力といったらとんでもないもの。


加えてここMANKAIカンパニーは男性のみで構成された劇団、おまけに見た目も悪くない。



つまり。

女性客が多ければ多いほど儲けが出るのだ。

うちのような男性劇団ならば尚更である。




左京さんは女性客の少なさに頭を悩ませているらしい。なぜ男性と女性の比率が分かるのかはもう突っ込まないことにする。




｢なるほど、女性客が少ないのは確かに由々しき事態ですね…

でも女性の客引きですか、そうなると今回公演を迎える皆は稽古に客引きにプライベートに…てんてこ舞いですねぇ｣





大変だ、と肩を竦めて先程自分でティーカップに注いだ紅茶を啜りながら俺は呟く。




左京さんは一見めちゃくちゃ怖いけど、話してみればいい人だし、倹約家だし、何だかんだ馬が合うし、仕事ぶりを褒めてくれるし……

とまぁこんな感じで俺の彼に対する印象は最高。





今回も客入りと評判も視野に入れているなんて流石だ…と俺は一人尊敬の意を左京さんに向ける。

ちらりと左京さんを見ると、目の前の彼は心底不思議そうな顔をしていた。



｢だからお前にそれを頼んでいるんだろ｣


｢………はい？｣



頼んだ？誰に？？何を？？？あれ今の幻聴？？？？

数秒の沈黙が流れた後、彼が発した言葉を上手く解釈出来ぬまま、俺は恐る恐る口を開いた。


｢…あの、幻聴が聞こえたかもしれないのでもう一度お願いします｣


｢はあ…？
…A、お前に女性の客引きを頼みたい｣





俺は思わず天を仰いだ。

▼ にじゅうに→←▼ にじゅう

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す