君の視線を奪いたい。【あんスタ】

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｢へぇ、渉くんが？｣

｢そうなんだよ、あの時は大変だったなぁ｣



そう言って優雅に紅茶を飲むのは天祥院英智くん。

ちなみに今は放課後。


保健室にいたら一緒にいた陣さんにまぁ見事にパシられて生徒会室に書類の届け物をしに来たのだ。


そこに居たのは(当然だが)ずらりと並ぶ生徒会メンバー。
中でも玉座に君臨する皇帝のごとく座る英智くんはなかなかだった。


そこから気付けばいつの間にか私はソファーに腰掛けておもてなしされていたのである。




｢渉くんは変装得意だからね…ちょっと見てみたかった｣

｢辞めた方がいい、あれはなかなかに酷かったからね
僕達はあんなA先生は見たくないよ｣

｢え、ますます気になるよそれ｣

｢すみません、ずっと気になってたんですけど…
それってもしかして、『偽A先生事件』のことですか？｣

｢あぁ、そうだ。おかげでえらい目にあった｣




眉間の皺を伸ばすように自分のそこを抑える敬人くんに心の中で合掌する。ドンマイ敬人くん。


というか私はそれよりも『偽A先生事件』と名前がつけられるほどに有名なその出来事が気になって仕方ないのだけれど。


英智くんに詳しく聞こうとしたが、何となく顔色が悪くなったのでやめておいた。




今更だが私は保健医兼心理カウンセラーとしてここの学校に教師として在籍している。
とはいえ私は元アイドルということもあり、そっち方面の授業に駆り出されることの方が多いのだが。

最近は仕事が忙しすぎて学校に顔を出せてなかったから、彼らの、生徒の顔を見るのが何だか新鮮に思えた。



｢全然関係ないけどさ、最後に会ったときより顔色良くなったね英智くん｣

｢おや、分かるかい？最近は特に調子が良くてね、レッスンにもしっかり参加できてるんだ｣

｢良かったね！でもまあ無理は駄目。少しでも異変を感じたら保健室にすぐ来ること！｣

｢ふふ、分かったよ。心に刻んでおこう｣

｢え〜でもでも、そんなこといったってAセンセー最近全然学校にいないじゃん！寂しかったんだぞ！｣



ほっぺたを膨らませて可愛らしく怒るのは姫宮桃李くん。
そんな彼のことを桃李くんの後ろで弓弦くんが困ったように見つめていた。




｢坊っちゃま、いけませんよ。A先生はご多忙なのです｣

｢有難いことにね〜
でも芸能の仕事の忙しさピークは今シーズンはもう乗り越えたから、暫くは学校にいるよ｣


本当に！？と喜ぶ彼を横目に、私は残りの紅茶を飲み干した。

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