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「久しぶり」

『今日はメガネかけてないんですね。あと、痩せました？』





キャスケットを被り直しながら、懐かしそうに目を細める柊。


最近まともに食べれてなくて、と返すと「夏ですもんね」と曖昧に答えられる。


季節が関係ないこと、知ってるくせに。








「なんでここに？」

『ここの本屋に用事があって。ついでに河村さんのとこに伺おうかな〜と思ってた所でした。』

「ふぅん。」








こんな小さな本屋に何の用だ、という言葉は飲み込んで、代わりにやるせない返事をする。


ちょっと立ってただけで流れる汗を雑に拭って、少し視線を彷徨わせた。





今、部屋結構汚いんだけどなあ、クソ暑い中こうやってだらだら喋るよりはいいかなあ、なんて思考を巡らせていると

「連絡なしに来てごめんなさい」と慌てた様子でひらひらと手を振って、ガサガサと紙袋が音を立てる。




その仕草、問題の答えド忘れした時の川上に似てる。






「いや、いいよ。部屋汚いけど。」

『ありがとうございます』






へらりと涼しげに笑う柊と、ギラギラと照りつける太陽の真下を並んで帰ることにした。

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