Story72 ページ29
「……ねぇ、A」
「なに?むいくん」
ギブスが外れない私は、未だに左指でキーボードを叩く日々。だが洗濯物とかもそろそろ溜まってきたし、やらなきゃいけないだろうか、うーん、なんて頭の片隅で考えていたところ、むいくんに話しかけられてそちらを向く。初日に比べればスムーズな動きで絵を描く彼の丸い瞳が、私の横に積み上げられているファイルを捉えていた。
「それ、昨日より多くなってない?」
「あぁ…ちょっとだけね。昨日納品があったから、その分かな」
「ふーん…」
カチカチっとマウスを操作したむいくんが、立ち上がって私の前ににゅっと腕を伸ばしてきた。手に取ったファイルをパラパラめくる。
「帳簿?」
「まぁね。パソコンソフトで出来るものもあるんだけど、やっぱり手書きで残さなきゃいけないものとか、あるんだ。でも私の手、こんな状況でしょ?だから治ってから一気にやっちゃえ、と思って」
「最後の日付、結構前のものだけど」
「……はい。元々ためていました」
指摘された事に、項垂れる。まぁつまり、事故から2週間、慣れるのに必死でそこまで手が回らなかったわけです。
「大変なんじゃない?」
「まぁ大変なんだと思うよ…。仕方ないけど」
「……僕がやろうか?」
「え?」
唐突な提案にむいくんを見ると、真面目な顔で見つめ返された。恥ずかし!
「僕だけ何も出来てないから。これなら、Aの指示通りに写して計算するだけだよね?それくらいならできるよ」
「いや……でも…」
申し出は大変ありがたいが、どうしよう。しっかりしているように見えてもむいくんはまだ14歳。法律的には働かせちゃいけない。バレなきゃいいんだって人もいるだろうけど、私の良心的にそれはダメだ。
そんな私の葛藤を見抜いたのか、むいくんはさらに言葉を続けた。
「どうしてAが僕に仕事をさせないのかわからないけど、これでも鬼殺隊の柱だ。それにその前は、きこりだった」
「…きこり、って、斧で木を倒すあれ!?」
「そう。だから…遠慮しないでいいんだよ」
言い募られて、うっと言葉につまる。確かに助かる…助かるんだけど。
「貰ってばかりじゃおかしい。僕はAに貰った分、ちゃんと返したい。……ダメ?」
「…………オネガイイタシマスル」
(結局最後に折れたのは)
(上目遣いで私の顔を覗き込んでくるむいくんの視線に)
(どうしても耐えられなかったからです!)
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灯霧(プロフ) - 絵宙(えそら)さん» ぎゃあ!見つけ次第順次直していきます……!ご指摘、お気遣いありがとうございます!頑張ります! (2020年4月16日 9時) (レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
絵宙(えそら) - 宇髄さんの「ずい」は骨へんですよ〜公式さんも間違えてましたね…w公式さんは少し寝た方が良いと思うんですよ…w天元郎にしちゃってましたし…夜中作業でしたら灯霧さんも寝てくださいね!!! (2020年4月15日 17時) (レス) id: 63faa5bcfc (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 神夜神美さん» ありがとうございます!体調の心配まで……!腰を痛めているなうな私には有難いです!← (2020年2月23日 18時) (レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
神夜神美(プロフ) - すごくおもしろくて最高でした!更新頑張ってくださいね!でもお体にもお気をつけてください!! (2020年2月23日 16時) (レス) id: 0f455588ed (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ももさん» コメントありがとうございます!ぜひぜひ、楽しんで頂けたらなによりです! (2020年2月21日 23時) (レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灯霧 | 作成日時:2020年2月20日 15時