検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:44,566 hit

story77 ページ29

そのまま抱きしめられて、数分。


「ねぇ、フェイタン」
「何ね」
「私、笑えないくらいに何も思い出せない」
「…そうか」


彼の腕の中でそう呟くと、あからさまに落胆した声が聞こえた。ぎゅっと腕に力がこもる。


「でもね、私はここにいたいと思う」
「…何故よ?」
「殺されちゃうから…って言うのは建前。やると言ったら旅団はやるんだろうけれど…それはわかっているんだけど」
「本音は?」
「…私がここにいたいと思ったから」
「そうか。ならいればいいよ」


死ぬまで。その瞬間まで、仲間でいればいい。彼はそう呟いた。


「ずと、ワタシのそばにいればいいよ」
「…なんか趣旨変わってない?」
「どうでもいいね。ワタシはAがそばにいれば」
「……自分でいうのも何なんだけど、フェイタンって本当に私の事大好きだね」
「愛してるからな」
「…愛、してる、か」


恥ずかしくて腕から逃れようとしたら、逃がさないと言わんばかりにさらに腕に力がこもる。


「痛い、痛い痛い」
「痛いくらいがちょうどいいね。お前は気づいたら、どこかに行てしまうよ。…もう、あんなことは二度とさせないね」
「…聞いてもいい?私が、記憶を失ったっていう事件のこと」
「……あぁ」


そこでようやくフェイタンは、Aの身体を解放した。地面に座ると、ポンポンと隣の地面に座るようたたいて促す。素直に隣に座ったAをちらりと見てから、空を見上げた。きれいな、青空を。


「…ヘリごと、奪う。ただそれだけの仕事だたよ」
「何を?」
「興味なかたから、もう忘れたね。…人だたのは覚えている」


静かなフェイタンの声が、Aの耳を心地よく打つ。


「後から知た話ね。ワタシ達、依頼人に利用されたよ。本当の目的は、蜘蛛を殺すことだたね。その仕事、本来はワタシとフィンでやるはずだた。でもワタシもフィンもヘリの操縦覚えるの面倒だたよ。だからAが覚えて、一緒に仕事をすることになた」
「そっか。ひどいな、フェイタンもフィンクスも」
「はは、あの時のAもそんなこと言てたよ」


(仕事の内容を詳しく覚えていなくても)
(あの時の…いや、いままでAとした会話はすべて覚えていたから)
(昔語りに不自由はしなかたね)

story78→←story76



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (82 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
170人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

- とても面白いです!つづき楽しみにまってます!頑張ってください、応援してます! (2020年4月6日 12時) (レス) id: 7d54cdb775 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 由宇さん» コメントありがとうございます!ちょいちょい停止しますが必ず書き上げますので、どうぞよろしくお願いいたします! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ここっちさん» もうちょいで記憶が!まだわかりません!(←)でも長い目で見ていただければと思います、よろしくお願いします! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ゆっずーさん» 遅くなりまして申し訳ありません!いつもありがとうございます!これからも頑張りますね! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
由宇 - 面白いです!早く更新停止が終わることを願ってます!頑張ってください! (2018年8月15日 11時) (レス) id: 06761224f9 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:灯霧 | 作成日時:2017年7月10日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。