検索窓
今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:44,569 hit

story74 ページ26

教会の敷地内を一通り見て回る。邪魔にならないようにと離れていてくれるマチは、考え事をするには十分の距離を保っていてくれた。壁についている古い傷を、指でなぞる。


(…懐かしいと思う、なんて気のせいだと思っていたけれど…)


どうやら思い過ごしではないようだ。確かに懐かしさは感じる。既視感のような、ふわふわとしている確かなものではないけれど。


(でも、なにか光景とかが浮かぶわけでもなし…)


映画や漫画のように、その光景や会話がフラッシュバックする、ということもなさそうだ。足を進めて少し入り組んだ廊下と、何部屋かある部屋をのぞいていると、声が聞こえてきた。


「懐かしいな。ここはアタシとパク、それにアンタの部屋だったんだ」
「あぁ…一応男女は分かれていたんだ」
「ま、ね」


入口近くで懐かしそうに部屋を見回すマチの声だった。首をかしげ、じっと見つめる。


「ん?なんだい?」
「マチは、なんで旅団に入ったの?別にここで一緒に育ったからって、強制じゃなかったんじゃないの?」
「確かにね…ってあんた、記憶が?」
「ううん、全然まるっきり引っかからないわよ。でも、クロロなら強制をすることはしないんじゃないかと思っただけ」
「…そういうことか。ちょっと期待した」
「ごめん」


でも自分ではどうしようもない。苦笑をすれば、いいよと頭を振られた。


「で、なんで旅団に…って?なんでだったかな、それ以外の選択肢なんてなかったよ。少なくともアタシにとってはね」
「そっか…。私はどうだった?嫌がるそぶりとか、見せていた?」
「いいや。少なくともあのころから一緒にいる奴らは、全員何も言わなかった。アンタも含めてね」
「胴体としての役割に関しても?」
「一言、『いいよ』とだけ。まぁ幻影旅団として活動してからも、みんな個々の生活はしていたし…その間はフェイタンとフィンクスの二人と一緒にいることが多かったみたいよ」
「その二人とは、昔から仲が良かったのかな」
「うーん…そうだねぇ。よく二人の喧嘩を見て楽しそうに笑っていたよ」
「それじゃぁ今と変わらないね」
「…そうだね」


変わってしまったのはAだ。それを自覚しているのだろうか、A自身寂しそうな笑顔になった。


(他人の思い出話というのは想像を膨らませて楽しむことができるけど)
(私の場合は自分の思い出話のはずなのに)
(何も思い出せないのが悲しかった)

story75→←story73



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (82 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
170人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

- とても面白いです!つづき楽しみにまってます!頑張ってください、応援してます! (2020年4月6日 12時) (レス) id: 7d54cdb775 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 由宇さん» コメントありがとうございます!ちょいちょい停止しますが必ず書き上げますので、どうぞよろしくお願いいたします! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ここっちさん» もうちょいで記憶が!まだわかりません!(←)でも長い目で見ていただければと思います、よろしくお願いします! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ゆっずーさん» 遅くなりまして申し訳ありません!いつもありがとうございます!これからも頑張りますね! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
由宇 - 面白いです!早く更新停止が終わることを願ってます!頑張ってください! (2018年8月15日 11時) (レス) id: 06761224f9 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:灯霧 | 作成日時:2017年7月10日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。