満月 ページ4
午前1時
「明日は何歌うんですか?」
「秘密です」
彼女は茶目っ気を含んだ笑顔で答えた
本当にあの歌声の主なのだろうか?
歌ってる時は大人で全てを包んでくれる様な堂々とした雰囲気だったのに、そんな笑顔を見せられたら別人かと思うほど
「あ、そうだ」
彼女は何か思いついたのか、ポケットから紙とペンを取り出し、カウンターに身を乗り出してきた。
思わず、僕は身を引く
「明日三曲歌うんですけど、あと一曲決まってないんです!何かリクエスト下さい!」
「え?」
「あ、こんな急にリクエストなんて難しいですよね。すみません、忘れて下さい」
「........ミスユー」
「ミスユーって星野源さんの歌ですか?」
「はい、歌って下さい」
「わかりました!頑張ります!」
これが、俗に言うギャップ萌えと言うものなのか?
満月の日 午後6時
「A、お店開けるぞ」
「ふぁーい」
大きなあくびで返事をすると自宅の二階から一階のお店へ向かう
この、真夜中の月は私の叔父である月橋さんがマスターで店員は私とバイトの空(そら)くんが主に働いてて、たまに月さんのジャズ仲間の人が手伝いに来てくれる
今日は平日だから、私と空くん、月さんでや
っていくのかな
「A、徹夜したのか?」
「うん、今日の練習してた。だってミスユー難しいんだもん」
「顔色悪いし、体調悪いんじゃないのか?」
言われてみるといつもより身体が重い
「今日は、歌う時間まで寝てろ」
「掃除するよ」
「いい、空をダッシュで出勤させる」
月さんは男の人には厳しいみたい。でも空くんは月さんのこと尊敬してて2人で飲みに行ったりしてるらしい
男の友情ってよくわからないや
重い足で部屋に戻ると、ベットに倒れこみそのまま寝た。
午前0時
「A‼ 起きろ‼」
「うぅう、、、空くん?」
「今日は満月だろ‼」
満月という言葉に一気に目が醒める
「やっと起きた、マスターが怒ってるぞ」
「まじ? 30分で用意する!!」
「いや、15分で用意しろ! 今日頑張れよ!」
そう言うと部屋から出て行った
空くんは余計な一言多いけど弟的な存在だから嫌いになれないのよね
あ、今日あの人来るのかな
「綺麗でした。」
上手いとか上手ではなくて綺麗
最高の褒め言葉だと思うの
なんていうか、私の歌声の本質っていうのを褒められた気がして、そしてなんだかときめいたりして
15分で用意だなんて無理!!30分かけてお洒落でしてこう
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作者名:怜 | 作成日時:2016年11月4日 11時