私は師匠を信じない【HUNTER × HUNTER】

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少女はいつも追いかけるばかりだった。それが今では、下からジリジリと追い詰められつつある。

(…あ、イイ)
(これ良いな。良い緊張感だ。)

今日はなんだか再確認する日だ。己の強さを、下から迫り来る脅威を、そしてそれに鼓舞される己を。

何気ないこんな会話で簡単に火がついた。今日やったばかりなのに、もうウズウズしてくる。

「…うかうかしてらんない、とか言ってるワリに随分楽しそうだな。」
「なんで？そりゃ楽しいよ。」
「…ソーデスカ」

キルアにとっても分からない感覚ではないけれど、少女のソレは己のより無邪気で純粋な分、より恐ろしく思えた。

「…俺、俺やっぱりエントリーしてくる！」

二人の話を聞いていたのかいないのか、スクっとゴンは立ち上がる。

「急にどうしたんだよ、ゴン」
「Aの試合見てたら、俺も戦いたくなってきた。」
「具体的且つ簡潔な説明ドーモ」

こっちにも似たようなの居たな。キルアはやれやれと鼻で息をついた。

「あ！でもまだAとは戦わないよ」
「え、なんで？」
「Aとは俺がもっと強くなってから戦って欲しいんだ。だから、まだ戦えない」
「確かに、お前ボコボコにされちゃうもんな。」
「なんだよ、手加減されるのもムカつくでしょ。」

少女はゴンの目を見てニタリと笑って

「…楽しみにしてるからね」

それに対してゴンはひたすらに目をギラギラさせ、元気よく返事する。

(ついていけねー…)

コイツら絶対楽しみの為に無茶するからなー…。俺がストッパーにならなきゃいけないのか。ったく、損な役割だぜ。

(…まあ別に、嫌ではないけど)


＊

「おおーっ！そこそこ人居るね」
「お前のおかげで俺らの周囲はガラ空きだけどな。」

先日の大活躍(・・・)によって見事観客達に敬遠された少女。勿論少女は何処吹く風である。

「そういや、ウイングさんは？」
「試合するって言ってる訳ないだろ。今頃中継見てブチ切れてんじゃね？」
「ブチ切れのウイングさんって…想像できないね」

そういいつつもケタケタ笑う。少女達が席に着くと周囲の人間がサッと席を立った。十中八九、少女対ジョッパー戦で少女にブーイングを飛ばしていた者だろう。

「ンー、気分が良いねぇ」
「ホントいい性格してんな、お前。」

ニヤつく少女は実に逞しい。

アナウンスが会場中に響き、リングにはゴンと対戦相手のギドが登場する。

「さぁ」

「魅せてくれ、ゴン。」

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