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scene274 ページ24




「……ろと……」


体を揺すられて目を開けると、Aが顔を覗き込む。


「……どうした」


寝ぼけながら体を起こすと、Aは廊下の方へ目をやる。


「なんか……音がしない?」


Aは心配そうな顔をするが、耳を澄ましても、なにも聞こえてこない。


「いや……なにも聞こえねえけど」

「で、でも……」


壁に掛かった時計に目をやる。時刻は深夜一時二十分。かなり寝た気がしてけど、そんなに時間は経ってないんだな。


Aは「気のせいだったのかな……」とつぶやく。でも、まだ不安そうな顔をしていた。


おれは毛布を退けて立ち上がる。


「ヒロト……?」

「廊下の方だろ、見て来る」

「わ、私も行く」





廊下は窓もなく真っ暗だった。明かりの点け方もわからなかったから、おれとAはスマホのライトを点けて進む。


「こっちの方か?」

「うん……」


暗い廊下が怖いのだろうか、Aはおれのすぐ側を付いて来る。少し意外だった。Aが暗い所を怖がるのも、物音がしたくらいで怯えているのも。


ここ最近のAの様子だと、この程度のことを怖がりそうにないと思っていた。Aは普通の女の子じゃないような気がしていたけど、それもまた違うんだな。


こうして暗い廊下を歩いていると、雷門中の廊下を思い出す。いつも真夜中の真っ暗な時間に潜入していたから。


「ごめん……ヒロト、こんな時間に起こして」

「別に」


そんなそっけない返事しかできなかったけど、正直、Aが頼ったのが野坂じゃなくてよかった。

すぐ隣にいたからかもしれないけど、そのことは少し嬉しかった。





音はピタリと止んでいた。でも、Aがまだ怖がるので、音が再び聞こえるまで廊下で待つことにした。正体が分かれば、Aも落ち着くだろう。


二人並んで腰を下ろして、壁にもたれる。Aは膝を抱えて、じっとしていた。


「お前、暗いとこ苦手なんだな」

「うん……ヒロトは平気なの?」

「まあな」


まったく怖くないかと言われると微妙だった。人間誰しも暗闇を恐れるものだろ。太古の昔からそういう習性なんだよ。



隣で丸まっているAを見て思う。

暗い所が怖いのに、夜の学校に忍び込んで飛び降りたりしたんだな。


そのときは怖くなかったのだろうか、それともそんなことを気にする余裕がないくらい、切羽詰まっていたのだろうか。

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ペナ紅 - やっぱ電話の相手、半田だったんだ…! (2021年7月5日 16時) (レス) id: 173b2b90f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのわたし(プロフ) - 完結おめでとうございます。高い文章力ですごく引き込まれました。私事ではありますがわたしは基山ヒロトが好きで吉良ヒロトがどうしても好きになれずこの小説を取っ掛りとして読ませていただきました。あなたの作品で彼のことを好きになれました。 (2020年12月8日 18時) (レス) id: 0a912f5e29 (このIDを非表示/違反報告)
りと - 完結おめでとうございます!丁寧かつ読みやすく想像しやすい文章でサクサク楽しく拝見できました!個人的には甘くない終わりにくそぅ!と思いつつでも現実だったらそうだよなぁとしみじみ受け止めました。笑 また是非に文字を書き続けてください!応援しております! (2020年11月22日 15時) (レス) id: 4c41bf9741 (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - とっても楽しく読めました!大好きな作品です!完結おめでとうございました! (2020年3月17日 10時) (レス) id: 40379c818e (このIDを非表示/違反報告)
鬼跡 - 完結おめでとうございます⊂((・x・))⊃この作品本当に大好きでした!!!!大好きです!ヾ(@⌒ー⌒@)ノ (2019年12月18日 18時) (レス) id: 8e87660fcc (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2019年8月22日 20時

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