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通り過ぎて行くだれかと肩がぶつかった。
はっとして辺りを見回す。そこには映像に釘付けられる、多くの人々。
背中を冷たい汗が伝っていく。ポケットの中でスマホが震えた。
『もしもし、ヒロトくん?』
右耳にあてたスマホから、野坂の声がぼんやりと聞こえる。
『ぼくはAちゃんのスマホのGPSを割ってみるよ』
「ああ……頼む」
手の甲で額の汗を拭う。
『……大丈夫? ヒロトくん、今どこにいるの?』
エイリア石は映像を介しても、効果があるのだろうかと、ふと思った。でも、ビジョンを見上げる人達を見ていれば、なんとなくわかる。
みんな、目に不思議な光が灯って見える。画面の明るさのせいかもしれないが、紫色の光に包まれて呆然としている人の様子は、あまりに奇妙だった。
「なあ、野坂……」
『なに?』
不意に寒気みたいな違和感が肩をかすめる。
「あったんだよ……エイリア石」
『え? あったって、どこに――』
声が途切れ、スマホを持った手がだらりと落ちる。
映像の中のAの目は、なにかを訴えかけるようだった。
そのとき、頭の中に高い屋上の淵に佇むAの姿が浮かんだ。
おれは人混みを掻き分け、バスターミナルへと急いだ。
・
真っ暗な学校という不気味さが、更に不安を煽る。
振り切ろうと全力で走っても、見えないなにかが真後ろを付いて来るみたいだ。
屋上へと続く階段は、足音が耳に痛い。汗で濡れた手で、重い鉄のドアを開く。
開いた隙間から風が吹き込んで、ドアを押し返そうとする。
屋上に、Aの姿はなかった。
おれは一瞬、安堵してしまった。でも違う。ここにいないなら、おれにはこれ以上心当たりがない。いるとしたらここだと思ったのに。他にどこへ行く当てがあるんだ。
とたんに感じたことのない焦燥感に襲われる。自宅にもいない、連絡もとれない、ましてや生放送をすっぽかしたんだ。それがどれだけの人に迷惑がかかるか、あいつが一番わかっているはずなのに。
それほど切羽詰まっていたと考えると、もう既に――
おれは頭を振って最悪の予感を意識から払い落とす。
落ち着け、まだそうと決まった訳じゃない。
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ペナ紅 - やっぱ電話の相手、半田だったんだ…! (2021年7月5日 16時) (レス) id: 173b2b90f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのわたし(プロフ) - 完結おめでとうございます。高い文章力ですごく引き込まれました。私事ではありますがわたしは基山ヒロトが好きで吉良ヒロトがどうしても好きになれずこの小説を取っ掛りとして読ませていただきました。あなたの作品で彼のことを好きになれました。 (2020年12月8日 18時) (レス) id: 0a912f5e29 (このIDを非表示/違反報告)
りと - 完結おめでとうございます!丁寧かつ読みやすく想像しやすい文章でサクサク楽しく拝見できました!個人的には甘くない終わりにくそぅ!と思いつつでも現実だったらそうだよなぁとしみじみ受け止めました。笑 また是非に文字を書き続けてください!応援しております! (2020年11月22日 15時) (レス) id: 4c41bf9741 (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - とっても楽しく読めました!大好きな作品です!完結おめでとうございました! (2020年3月17日 10時) (レス) id: 40379c818e (このIDを非表示/違反報告)
鬼跡 - 完結おめでとうございます⊂((・x・))⊃この作品本当に大好きでした!!!!大好きです!ヾ(@⌒ー⌒@)ノ (2019年12月18日 18時) (レス) id: 8e87660fcc (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2019年8月22日 20時