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scene99 ページ49

食堂に戻る途中、おれはふと心に引っかかっているものを思い出した。


「なあ……野坂」

「なに?」


歩きながら、野坂が顔だけこちらに向ける。


「なんでAは野坂にだけ話したんだろうな」

「え?」

「別の世界から来たってことだよ」

「やきもち?」


野坂は意地悪く笑った。図星だったから、おれはなにも言えなかった。


「なんでだろうね。Aちゃんはヒロトくんのことが好きだったのに」


なんでおれじゃなくて野坂だったんだろう。

そりゃあ、おれなんかより、野坂の方が頼りになるだろうけど……。


「好きだから、じゃない?」

「は?」

「好きだから、言えないこともあるんだよ」


なんだそれ……意味わかんねえ。


すると野坂は急に目を見開いた。それから口元に手をあてて、しばらく固まっていた。


「……どうした」


おれは固まっている野坂の横顔に話しかける。


野坂は「そっか……」と小さくつぶやいた。


それから急におれの方に向き直り、両肩をがっちり掴む。


「おぉう……、なんだ野坂、落ち着け」


あまりの気迫に、おれはたじたじになる。


「そうだよ、ヒロトくん」

「……なにが」


おれが訊くのを無視して、野坂は踵をかえし、歩きだす。

おれは立ち止まったまま呆気に取られていた。


「そうか……、それなら。……いや、やっぱり……」


野坂はなにやらひとりでぶつぶつ言いながら先へ行ってしまう。


「なんだ……なんかわかったのか」


おれは野坂に追い付いて訊いた。


「……うん。まだ足りないけど……少し繋がってきた」


今のでなにがわかったんだろうか。

野坂はどこか納得したようにうんうんと頷いて。それから言った。


「たぶん、Aちゃんがぼくに話してくれたことは、さほど重要じゃないんだよ。そのときは、それがAちゃんの知っている全てだったんだだろうけど……」


野坂は眉間にしわを寄せた。

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- 福岡、京都、沖縄...陽花戸中、漫遊寺中、大海原中ですね。立向居や木暮、綱海がいるか確かめにでも行ったのでしょうか...。でも、夢主ちゃんの世界にヒロトは存在していない、と聞いたとき、ヒロト本人はどう思うのでしょうか...続きがすごく気になります! (2019年2月17日 17時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
- 無印時代からアレス時代に来るとき、雷門中から飛び降りたことで夢主ちゃんがこの時代に来れたとか...?色々想像できて楽しいです!頑張ってください! (2019年2月15日 13時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
- 初コメ失礼します!!もしかして夢主ちゃんは無印時代から来た子ですか!?アツヤ見て泣いたのも、ヒロトを見てビックリしたのもつじつまが合いますし...。(アツヤが生きてて嬉し涙、ヒロトがタツヤと全然似てなくて驚き)いつも応援しています!! (2019年2月12日 3時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - すごく場面場面が入ってきてとっても読みやすいです!続き楽しみにしています♪ (2019年2月11日 22時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
はずにゃん☆ - こんな感じの小説待ってましたー♪投稿頑張て下さい。 楽しみにしています! (2019年2月9日 14時) (レス) id: f86bddf786 (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2019年2月8日 17時

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