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scene89 ページ39

風丸さんは、喉にひっかかっているものを懸命に飲み込もうとして、でも体が受け付けないといった感じだった。


「それから、向こうではアイドルとしての活動はしていなかったらしいんです」

「え、そうなの?」と吹雪さん。

「なんていうか……こっちの世界とは、結構違ってるんだな」


おれは自分に言い聞かせるように口にした。なんとかして自分を納得させるしか、このめちゃくちゃな仮説を受け入れる方法がなかった。


「Aちゃんが、こっちの世界に来たのって、いつごろなの?」と吹雪さんが訊いた。

「おそらく、雷門サッカー部のメンバーが強化委員として派遣されていった時期だと思います」


野坂の言葉を聞いて、風丸さんがはっとした。


「ちょうどその時期に、なんらかの原因で時空に歪が生じたとか、そういう事象が起きたということが考えられますね。風丸さんの記憶が抜け落ちていることも、その影響かと」

「やはりそうか……」と風丸さんが渋い顔で言った。


「それから、強化委員という制度は、向こうにはなかったと言っていました」

「じゃあ、雷門サッカー部は解体されなかったんだ」と吹雪さん。

「はい。Aちゃんはこっちの世界に来て、最初に雷門中に行ったそうなんです。そこでサッカー部が今は存在していないということを知り、相当ショックを受けたようです」

「それで、自分が違う世界に来たってわかったのか」


おれの言葉に野坂が頷いた。


それは辛いだろうな……。当たり前にあったものが、突然なくなっているなんて。


「雷門サッカー部が解体されなかったとして、その後はどうなるんだ」


風丸さんが疑問を口にする。


「確か……いろいろあってから、その後に今と同じように、FFIがあったと聞いています」

「いろいろってなんだよ」

「そこまでは聞いてないんだ」


なんでだよ、そこ大事なとこじゃねえのか。


「ん……? こっちの世界と時間がずれてるってこと?」


吹雪さんが首をかしげる。


「こっちの世界に来たのは、雷門中が去年のフットボールフロンティアで優勝した後なんだよね。あっちの世界でFFIがあったってことは、Aちゃんが元いた世界は、こっちより時間が進んでるのかな?」

「時間がずれているのか、もしくは全く別の世界線を辿っていたと考えた方がいいかもしれません。話を聞く限り、あっちの世界のFFI自体が、ぼくたちが今参加しているFFIとは、まったく別物といっていいほど、違っていましたから」

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- 福岡、京都、沖縄...陽花戸中、漫遊寺中、大海原中ですね。立向居や木暮、綱海がいるか確かめにでも行ったのでしょうか...。でも、夢主ちゃんの世界にヒロトは存在していない、と聞いたとき、ヒロト本人はどう思うのでしょうか...続きがすごく気になります! (2019年2月17日 17時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
- 無印時代からアレス時代に来るとき、雷門中から飛び降りたことで夢主ちゃんがこの時代に来れたとか...?色々想像できて楽しいです!頑張ってください! (2019年2月15日 13時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
- 初コメ失礼します!!もしかして夢主ちゃんは無印時代から来た子ですか!?アツヤ見て泣いたのも、ヒロトを見てビックリしたのもつじつまが合いますし...。(アツヤが生きてて嬉し涙、ヒロトがタツヤと全然似てなくて驚き)いつも応援しています!! (2019年2月12日 3時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - すごく場面場面が入ってきてとっても読みやすいです!続き楽しみにしています♪ (2019年2月11日 22時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
はずにゃん☆ - こんな感じの小説待ってましたー♪投稿頑張て下さい。 楽しみにしています! (2019年2月9日 14時) (レス) id: f86bddf786 (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2019年2月8日 17時

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