子供１０ ページ10
「Aさん！何してるんすか！」
案の定、味方に怒られる。
そりゃそうだ。
この天人を生かしたところで、こちらのメリットは何も無い。
むしろ、傷を負うことになる可能性が高くなる。
けど…。
「貴方は、死を考えた事ありますか？」
「…え」
「私はありません。怖いので」
そっと目を向けると、彼は少し口を開け「あ…」と声をもらす。
無駄な命なんて、殺していい命なんて、ない。
けど、そうしなきゃいけないなんて、残酷じゃないか。
怯えたように黒目を小さくする彼に、微笑する。
「私たちは賢くないから戦わなきゃダメなんですよ。死を傍らに戦わなきゃいけない。死ぬのは怖いから、戦わなきゃいけない」
だから、殺さなくてはならない。
結局は自分のエゴなんだ。
勝ちたいから、助けたいから、生きたいから。
だから、刀を振るうんだ。
「じゃあ、戦うことは正義だと思いますか」
悲しげな表情で声を漏らす彼。
「分かりません。でも、必死に生きることは美しいと思います」
見事、私たちは勝利を収めた。
空き家ではみんな酒を煽りどんちゃん騒ぎである。
私は飲めないのでボーっとしていると、誰かがそばに来て座った。
見れば、戦時中に話した味方の一人であって。
「俺、神宮寺 彰(ｼﾞﾝｸﾞｳｼﾞ ｱｷﾗ)って言います。今日はありがとうございました」
しっかり顔を見ていなかった。
若い。
活気溢れる笑顔は、青年だ。
「お礼言われる事なんて何も…」
「Aさんはすごいっす。俺より年下なのに、あんたは強い。すごいっす…」
この戦争の中で、最年少と言われている。
十六の私がでしゃばって戦闘していることに、嫌悪感を抱く味方も少なくない。
けど、こうして慕ってくれる人がいるのは嬉しい。
「強くないですよ、メンタル的にも。ただ、怖がってるだけなんです」
「…」
目を伏せそう言えば、彼は真っ直ぐな目で見つめてくる。
あまりにも強い視線に耐えきれなくなり、目を泳がせてしまった。
すると、急に私の手を掴んできた。
ギュッと握り、距離を詰められる。
「いいや、あんたほど強ェ女はいない！俺、あんたみたいな女が好きだ。死と向き合って、味方も敵も守って、真っ直ぐで…」
「っふふ」
「え、なんで笑うんすか」
「だ、だって、彰さんの目がキラキラしてるから。戦時中にそんな純粋な色をした瞳を見たのは初めてです」
久しぶりに笑った。
彰さんは恥ずかしいのか、顔が真っ赤に。
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作者名：お茶
| 作成日時：2019年11月8日 23時
