子供２０ ページ20
〜小太郎side〜
それは一瞬の出来事だった。
脇腹に刀を突き刺されたAが、吐血をし固まる。
助けに行こうと右足を踏み出した時、銀色が一瞬で横切った。
光の速さで大将の心臓を突く。
「死ね！死ねええええええ！！！！」
大将は八つ裂きにされ、見るに堪えない姿に。
「銀時！落ち着くんだ！！もう死んでる！！！」
声をかけても、銀時の怒りは治まらない。
何かが壊れたように、狂い激しく刀を振るう。
すると、高杉が走ってきて銀時の腕を掴んだ。
息を荒くし歯を食いしばった銀時が振り向くと、高杉は冷静に口を開く。
「もうミンチじゃねぇか。ガキじゃねぇんだ、加減を知りやがれ。早くAを運ぶぞ」
鬼の形相だった銀時の顔色が、徐々に戻っていく。
俺はその様子を見て、すぐにAの元へ走った。
意識を失った彼女を背負い、周りを警戒しながら帰る経路を模索する。
チラッと銀時を見れば、放心状態だった。
ただ一点を見つめ、目を虚ろにさせる。
何か声をかけようとしたが、言葉が見つからなかった。
空き家へ何とか戻り、布団にAを寝かせる。
今回は数多くの負傷者を出してしまったが、俺の中でAを優先して治療しなければと本能が動いてしまった。
治療していると、後ろから肩を掴まれる。
「A…」
振り向けば、目を死なせた銀時が立っていて。
俺の隣に腰を下ろすと、一緒になって包帯を巻き始めた。
「大丈夫だ、息はしている。軽症ではないがAの体力なら必ず治る」
と口では言いながらも、心臓は速く動き焦っていた。
後悔が襲う。
あの時、Aの近くにいれば。
大将の動きに敏感に、迅速に行動していれば。
だが、きっと銀時の方が焦っている。
そして自身を責めているに違いない。
暴れ回る自分の感情を押し殺すように、銀時は優しくAの頭を撫でていた。
遠い目をし、ゆっくりと。
「…水を持ってくる。その間Aの事を頼めるか」
そっとそう言えば、銀時は無言で頷いた。
サラリと銀髪が悲しげに揺れる。
Aだけを見つめる銀時に胸が痛み、俺はすぐに廊下へ出ていった。
銀時はAに依存しすぎている。
それが故に、Aの責任を負うのも銀時だ。
Aを守れなかった、責任を。
…俺は、心のどこかで分かっていた。
そうであると、幼い頃から思っていた。
銀時とAの間には、特別な糸が繋がっている。
それは俺達には見えないのだと。
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作者名：お茶
| 作成日時：2019年11月8日 23時
