子供19 ページ19
そこで私はハッとなる。
この現状に、この現実に、この戦場に。
私は何を感じ、何を護ろうとしていたのか。
それを、つまり大切なものを忘れ、戦闘に快楽を覚えていた。
その事実がショックで、目眩がする。
「深く考えろ!!」
汗を流し、必死にそう叫んでくれる銀ちゃん。
私は目を見開き、固まる。
「考えねぇ事が命取りなんだよ、お前自身を見失う材料になっちまうんだよ!だから考えろ!思い出せ!俺たちや先生を!!」
言い終わると、肩を切らし上下していたのを落ち着かせ、私から手を離してくれた。
そして最後には頭に手を置いてくれて。
「…行くぞ」
そう言うと、彼はすぐ戦闘へ戻って行ってしまった。
銀色の髪は美しく舞い、儚げに乱れる。
その姿に目を奪われ、呆然と立ち尽くす。
すると、私の右肩に手が置かれた。
振り向けば、神宮寺 彰がそこにいて。
「大丈夫っすか、Aさん」
ヘラッと笑い、私の返事を待たずに口を開く。
「俺は、一生銀時さんに適う気がしません。あんたを奪おうとすりゃ、きっとあの人は本気で俺を殺すでしょう。それほど、貴方を大切に想ってるんでしょうね」
微笑し、刀を強く握った。
そして走る体勢に入り、真っ直ぐに敵陣を見ながら呟く。
「その大切な人を忘れねぇように、自分を忘れねぇように」
口角を上げ、諦めたように笑った。
そして彼もまた、敵陣へと身を投げて行く。
私は竦んだ足にムチを打ち、身体に力を入れた。
大切な、人…。
その瞬間、私は尋常じゃない速さで走り出した。
真っ向から来る敵を一人残さず斬る。
急所を的確に狙い、必ず仕留めていく。
「あ゛あぁぁぁあああ!!!!!!」
喉から出た焼けた声、血塗れな全身。
胸が軋む音がして、涙が出そうになる。
犠牲を払って、立ち向かって、殺して。
そんなものすら忘れ、殺す事に快楽を覚えて。
私は…。
銀ちゃんに言われた通り、ネガティブではあるが頭で何か考えながら戦闘をした。
結果、冷静な判断力が戻り、何が一番最善な策なのか整理ができるようになった。
周りにいる天人を斬り殺し、前へ進んでいく。
その時だった。
「…え」
私の脇腹に、刀が突き刺さっている。
前から刺されたのだろうか。
血が滲み、意識が朦朧としだす。
ゆっくりと視線を上げれば、敵の大将である天人がニタリと笑っていて。
「冷酷な艶美よ、貴様はここで死ぬのだ」
「ぎ…銀ちゃ、ん…」
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作者名:お茶 | 作成日時:2019年11月8日 23時