子供40 ページ40
小さい頃、寺子屋にいた頃の話だ。
「晋助兄さん、こっち来て!」
凍えるほど寒い真冬の時期のこと。
手と顔を真っ赤に染めた私は、寒さなんか忘れていた。
晋助兄さんの手を無理やり掴んで、走る私。
真顔で手を引かれる晋助兄さんは、私に付き合って走ってくれた。
木の下、ちょうど日が差し込む辺りに着く。
彼の手を離し、静かにしゃがみ地面に咲く一輪の花を見つめた。
「これ見て!雪の中から綺麗なお花が咲いてるの」
「花?」
「そう!この花なんて名前か知ってる?」
小さな掌を花にそえ、回答を待つ。
「知らねぇな」
「待雪草(マツユキソウ)、スノードロップって言うのよ、素敵なお花でしょ?」
四、五枚ほど真っ白な花びらを付け、前かがみに地面に向けて花弁を広げている。
美しいフォルムに惹かれ、先日先生にこの花の名を聞いたばかりだった。
「へぇ、面白ぇ名前だな」
晋助兄さんは銀ちゃんと違って、花や歌など美しいものに関心を持ってくれる人だった。
だからこうして、小さい頃の私は晋助兄さんと共有していた。
その時間が好きだったのだ。
「今は朝だから開いてるけど、夕方になると閉じちゃうの。不思議よね…」
「教えて貰ったのか」
「うん!先生は何でも知ってるね、すぐ答えてくれた」
「へぇ」と、何を考えているか分からない曖昧な相槌が返ってきた。
そんな事に気に留めるはずもない幼い私は、話を続けていく。
「雪と同じくらい真っ白だね〜」
微風に吹かれ、花びらが揺れた。
穏やかな空気が流れ、ふわふわした感覚になる。
すると、ダッダッダッダッと、後ろから物凄い足音が聞こえる。
私と晋助兄さん二人して振り向けば、銀ちゃんが裸足で走ってきていて。
そのまま晋助兄さんに飛び蹴りをかます。
しかし、晋助兄さんは軽い身のこなしでヒョイッとかわせば、銀ちゃんは顔面からずずーっと雪の中に埋もれた。
「はぁ…てめぇ、どういうつもりだ」
呆れた口調で晋助兄さんは呟く。
私もバカらしい光景に引きつった顔になる。
「避けんじゃねぇよ!!!」
ガバッと起き上がると、鼻の頭を真っ赤に染めた銀ちゃんが怒鳴る。
そんな彼の後ろの待雪草を見て、潰されていないことに安心した。
「ねぇどうしたの?急に走ってきて」
ため息混じりにそう聞けば、彼は目をそらす。
「二人で楽しそうにしやがって…」
「え?なに?」
「何でもねぇよ!!!」
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お茶(プロフ) - アルムさん» 素敵なコメントありがとうございます!!心の支えでございます涙次回作も宜しければ読んでいただけたら光栄です!ありがとうございました!! (2019年11月8日 23時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
アルム(プロフ) - お茶さんこんにちは! 番外編完結おめでとうございます。1シリーズのときからずっと好きで毎日読んでいました。お茶さんの綴る文章、大好きです。毎日お疲れ様です。次回作も楽しみにしています。 (2019年11月8日 23時) (レス) id: 4726a4adc0 (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - みゃんさん» わぁぁあコメントありがとうございます!続き頑張って書きあげますね!! (2019年9月4日 0時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
みゃん - 一気に読んじゃいました!めっちゃ面白いです!!続きが早く見たいです! (2019年9月3日 22時) (レス) id: 21dc5ec498 (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - あくび少女さん» コメントありがとうございます!ニヤニヤ…( -∀-) (2019年9月1日 1時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お茶 | 作成日時:2019年4月9日 2時