あなたに贈る花束【坂田銀時】

花束９ ページ9

後ろから声がしたので、ビクッと肩を震わせてしまった。

振り向くと、湯気が立ちトロトロの卵で包まれたオムライスが乗った２つの皿を持ったAの姿が。

テーブルに置き、俺に向かって手招きをする。

カーペットの上に胡坐をかいて座ると、テーブルをはさんでAも俺の目の前に座った。

目の前のオムライスは、俺の腹の虫を鳴かせた。


「簡単なものですいません…」


「俺ガキん時から大好物だから。サンキュな」


手を合わせ、彼女に伝わる様に「いただきます」と声を出した。

銀のスプーンでカットすればすんなりと入り、卵がトロットロにあふれ出てきた。

ゆっくりと持ち上げ口に含むと、卵が溶けてチキンライスのしっかりとした味が広がった。


「うっま…」


うまい。うまい、けど。

俺の脳裏には、別の事がちらついていた。

俺が写真見てたこと、バレてたよな。

あれ、マジで元カレなのかね。

俺にするっていう可能性はないのかね。


「坂田さんは、確か甘い物好きでしたよね？」


「あ、あぁ…。めっちゃ好き」


「よかった。昨日親戚からもらったプリンがあるんですけど、一緒に食べませんか？」


「食う！！」


勢いよく返事をすれば、彼女はクスクスっと笑った。

一気にオムライスを完食すると、彼女は自分は途中なのに立ち上がり、チーズとビールを持ってきてくれた。


「わりぃ。飲んでいいのか？」


「っふふ…これ、坂田さんのですよ？」


「いや、そうなんだけどよ。酒入れてもいいかって話」


「はい！私が食べ終わるまで、少しずつお願いします」


ニコッと笑うAは、「プリンは一緒に食べたいので」と付け足した。

心臓がもたねぇ。


酒が入れば出さなきゃいけなくなる。

俺は、彼女を見ているだけで酒が進むようだ。

Aが食べ終わったころ、トイレに行ってもいいかと断りを入れた。

その後部屋に戻れば、テーブルに２つのビンに入ったプリンと、スプーンが置かれていた。


「可愛いですよね、これ」


ふたの下のビンのくびれには、赤いリボンがちょうちょ結びでついていた。

俺が食ってもいいのかこれ。


「遠慮なくもらっちまうけど。後になってやっぱ２個食べるって言ってもあげねーからな」


「大丈夫ですよ。坂田さん子供みたい」


またクスクスっと品の良い笑顔を見せてくれる。

可愛いな。

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